日本人健康成人における血圧・脈拍数測定前の安静時間設定のための運動負荷後循環応答に関する研究

DOI
  • 大神 佳恵
    医療法人相生会 福岡みらい病院 臨床研究センター
  • 吉原 達也
    医療法人相生会 福岡みらい病院 臨床研究センター
  • 峯 幸稔
    医療法人相生会 福岡みらい病院 臨床研究センター
  • 吉富 由佳
    医療法人相生会 福岡みらい病院 臨床研究センター
  • 安部 直会
    医療法人相生会 福岡みらい病院 臨床研究センター
  • 工藤 郁美
    医療法人相生会 福岡みらい病院 臨床研究センター
  • 坂田 祐子
    医療法人相生会 博多クリニック
  • 野中 千津子
    医療法人相生会 博多クリニック
  • 原中 美環
    医療法人相生会 博多クリニック
  • 江藤 隆
    医療法人相生会 博多クリニック
  • 松木 俊二
    医療法人相生会 福岡みらい病院 臨床研究センター
  • 入江 伸
    医療法人相生会

抄録

<p>【目的】薬剤開発時などの健康成人を対象とした臨床試験では、血圧や脈拍数の評価が重要である。血圧や脈拍数は身体活動に影響を受けるため、測定前の安静時間確保が臨床試験のみならず日常診療でも慣例となっている。しかし、安静時間を何分とすべきかについては一定の見解がない。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019では座位で「数分」としており、臨床試験においても3, 5, 10, 15分など大きなばらつきがある。必要以上の安静時間は、被測定者の負担を増やすだけでなく、円滑な診療や臨床試験の実施の妨げになることが懸念される。本研究では、運動負荷後の血圧と脈拍数が安定するまでの時間を評価することにより、血圧・脈拍数測定のために必要な安静時間について検討した。【方法】60歳未満の日本人健康成人34名(男性17名、女性17名)を対象に、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30テスト)を実施し、直後および終了から1分毎に15分間の血圧・脈拍数を座位にて測定した。結果は平均値±標準誤差で示した。安静時との差を反復測定一元配置分散分析により解析し、多重比較をDunnett法で行った。【結果・考察】安静時の収縮期血圧は111.3±2.3 mmHgであり、CS-30テスト直後に121.4±3.3 mmHgと有意に増加したが、3分後に112.2±2.5 mmHgと有意差はなくなった。4分後以降は安静時よりも低い値で推移し、6分後以降は安静時より有意に低くなった。脈拍数は、安静時は72.0±1.6 bpmであり、 CS-30テスト直後に94.2±2.2 bpmと有意に増加したが、2分後に73.7±1.9 bpmと有意差は消失し、以降は安静時と同程度の値で推移した。一方、拡張期血圧は、安静時が71.3±1.6 mmHgであったものがCS-30テスト直後に67.9±1.8 mmHgとなり、以降緩やかな低下傾向が観察された。拡張期血圧に脈拍数や収縮期血圧のような一過性の上昇が認められなかったのは、運動負荷による血管拡張を反映していると考えられた。男女別、年代別の比較では、臨床的に意義のある性別や年代による影響は認められなかった。【結論】CS-30テストの運動負荷により、脈拍数と収縮期血圧には一過性の上昇が認められたが、両者とも3分後には安静時と同程度となった。スクリーニング検査や通所時検査を含めて臨床試験中の血圧・脈拍数測定直前にCS-30に相当する運動負荷がかかることは考えにくいため、臨床試験中の血圧・脈拍数測定前の安静時間は3分間で十分であることが示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298742739271680
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-p-e5
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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