Warfarin投与量予測モデルにおけるPT-INR欠測値補完方法の探索

DOI
  • 弓場 遼真
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野
  • 齊藤 茉莉佳
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野
  • 前田 真一郎
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学部附属病院薬剤部
  • 廣部 祥子
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学系研究科分子医薬学講座 大阪大学医学部附属病院薬剤部
  • 藤尾 慈
    大阪大学薬学部臨床薬効解析学分野
  • 前田 真貴子
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学系研究科分子医薬学講座 大阪大学医学部未来医療開発部

抄録

<p>【目的】Warfarinは治療有効域が狭く、至適用量の個人差が大きいことが副作用発現の要因となるため、血液凝固能を表すプロトロンビン時間(以下、PT-INR)によって投与量調節が行われる。近年、機械学習を用いて、患者情報(性別、年齢、体重、身長、前4日間の投与量及びPT-INR等)を説明変数とするWarfarinの投与量予測モデル(以下、予測モデル)が報告されている1)。限られた条件に基づく患者を対象とする臨床研究において、欠測値の発生は不可避であり、機械学習モデルの予測精度を低下させる一つの要因であることより、適切な欠測値の補完は重要な課題である。本研究では、PT-INRの欠測値の補完方法が予測モデルの汎化性能に及ぼす影響を解析し、適切な補完方法を探索することを目的とした。</p><p>【方法】大阪大学薬学研究科において実施された「Warfarin個別化投与法に関する研究」への参加と将来の研究への参加に同意した左室補助人工心臓 (LVAD)を装着された患者89名の既存情報を用い、先行研究1)をもとに作成した予測モデルに対して教師あり学習を行った。PT-INRの欠測値に対して、線形補間法を含むいくつかの異なる方法で補完を行い、それぞれ予測モデルに学習させ、補完を行わなかった予測モデルとの汎化性能を評価した。予測精度の評価として相関係数、Mean Absolute Error (MAE)、Root Mean Squared Error (RMSE)を用いた。本研究は、大阪大学ゲノム倫理委員会/研究倫理審査委員会の承認を受け実施した。</p><p>【結果・考察】補完を行わなかった予測モデルの相関係数、MAE、RMSEはそれぞれ、0.812、0.283、0.375であった。訓練データ及びテストデータの全てに対して線形補間を行った予測モデルでは0.902、0.143、0.245であり、線形補間を行うことで汎化性能の向上が認められた。しかし、訓練データにのみ補完を行うと0.839、0.246、0.349と汎化性能は低下した。機械学習モデルにおいて、全データに対して線形補間を行うことは、学習モデルがその線形性を学習することによって高い予測精度が得られた可能性があり、注意が必要であると考えられた。</p><p>【結論】欠測値補完は様々な方法があるが、機械学習成果の実臨床に向けては、適切なデータ処理とモデルの慎重な検証が重要であることを確認した。</p><p>【参考文献】</p><p>1)Lee, H., et al. Development of a system to support warfarin dose decisions using deep neural networks. Sci Rep 11, 14745 (2021)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298742739277184
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-p-i1
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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