緊急承認制度について

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  • 南 学
    独立行政法人医薬品医療機器総合機構

抄録

<p>COVID-19パンデミックは、わが国のみならず、米国や欧州を含む世界の薬事規制にも大きなインパクトを与えた。ワクチンの承認・審査においては、緊急時の迅速な承認制度として、日本では特例承認、米国では緊急使用許可 (Emergency Use Authorization)、欧州では条件付き販売承認 (Conditional Marketing Authorisation) を用いて急速な感染拡大という難局に対応したが、欧米と比較し、日本の特例承認の問題点も指摘されていた。</p><p>そのような状況の下、有事に緊急対応するための新たな審査や承認の枠組みとして、治療薬やワクチンの「緊急承認」制度を創設する改正医薬品医療機器法が令和4年5月に可決成立し、同月公布された。</p><p>特例承認の対象が「外国 (日本の薬事制度と同等の水準の制度を有する国) で流通している医薬品等」であるのに対し、緊急承認制度では原則全ての医薬品が対象である。緊急承認制度における承認審査の考え方は、課長通知 (令和4年5月20日薬生薬審発0520第1号) においてガイドラインが示されている。すなわち、有効性・安全性の評価においては、緊急時におけるリスクとベネフィットのバランスを考慮し、安全性については従前と同水準で安全性があると判断できる一定の情報が必要であるが、有効性については「申請に係る効能又は効果を有すると推定されるものであること」とされている。一方、緊急承認された医薬品等に対しては、最大2年間の期限内に、有効性確認のため原則として検証的な第III相臨床試験等を行い、再度承認申請することが求められている。</p><p>医薬品医療機器総合機構 (PMDA) においても、優先審査への対応の他、開発早期の段階から相談に応じるなど、関連製品の開発が円滑に進むよう取り組みを進めてきた。なお、緊急承認された医薬品も「医薬品副作用被害救済制度」の対象であることを付け加えておきたい。</p><p>COVID-19パンデミックは、原薬サプライチェーンや生産体制、品質管理、迅速な臨床試験の実施体制の重要性も明らかにした。産官学民のステークホルダーが協働し、有事への対応のみならず、わが国の創薬力全体の強化に繋がる取り組みを今後も推進すべきである。</p>

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  • CRID
    1390298742739302912
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-s12-1
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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