医療現場におけるファーマコメトリクスの利活用-カルテ情報とMBMAによる医薬品評価-

DOI
  • 家入 一郎
    九州大学病院薬剤部 九州大学大学院薬学研究院臨床薬物治療学

抄録

<p>臨床現場におけるファーマコメトリクス(PMx)活用の代表には、TDMのための母集団薬物動態(PPK)/薬効動態解析(PPD)が挙げられる。TDMの対象となる医薬品は年々増加する傾向にあるので、Bayesへの展開も含め、適切なTDMを実施するためには、PMxで得られる情報は不可欠となる。このようないわゆる古典的なPMxに加え、ここ数年の間にPMxの発展系(?)とも言える以下の2つの工夫が加えられたと感じている; (1)電子カルテ情報を活用した薬効評価、(2)MBMAである。(1)の例を挙げると、院内で採用する3種類のスタチンによる経時的LDL-C低下作用をモデル化した。378患者から得た2863測定点をカルテより抽出し、physiological indirect response model を構築した。その結果、それぞれの薬剤での低下作用を良好に反映した解析が可能であった。ロスバスチタンとエゼチニブの併用で最も良好な臨床効果が得られた。また、個々の患者のLDL-C低下のBayes予想曲線も得ることができ、患者への薬物療法参画へのモチベーション作りにも有用と言える。2病院(市民病院と国立大学病院クラス)のカルテ情報を活用し、尿酸降下作用を有するフェブキソスタットの薬効評価を同様な方法で行い、施設間での比較を試みた。共変量や尿酸値のベースラインに施設間差が見られた。このような評価は、電子カルテ情報があれば、容易に実施可能となる。(2)では、アトピー性皮膚炎治療薬、原発開放隅角緑内障の第二選択薬、神経障害性疼痛治療薬、切除不能膵癌に対する化学療法の有効性比較についての検討を加えてきた。(1)(2)ともユーザーの希望するかたちでの医薬品評価が可能であり、PMx特有な部分としては、横軸が時間単位の表現、共変量の評価、シミュレーションが可能な点が挙げられる。構築モデルの妥当性、データの信頼性(特に(2))が問題になろうが、どの程度の信頼性を期待するかで、活用の方法が異なると言える。ただ、得られた結果の評価や検証については、議論が残る。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298742739417472
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_2-c-s24-3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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