多機能性血漿タンパクの受容体探索同定法と創薬戦略

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抄録

<p>血漿中には、2000種類以上の血漿タンパクが存在すると言われているが、血液凝固・線溶系因子、免疫グロブリン、炎症関連因子や特定基質の輸送因子を除いて作用が解明されているものは少ない。一方、血漿タンパクはその存在特性から、幅広く生体のホメオスタシス維持に働くことは、容易に推測できる。 演者らは、代表的なDAMPs 分子であるHMGB1あるいはS100A8/A9 と複合体を形成する血漿タンパク因子Histidine-rich glycoprotein (HRG)を同定し研究を進めてきた。これまでにHRGには、好中球の静穏化、赤血球の溶血抑制、血管内皮細胞の保護、がんの転移抑制などの作用があることを明らかにした。またHRGの低下が敗血症病態進行に寄与していることを示唆してきた。さらに、HRGが示す多様な作用には特異的受容体が介在すると仮説し、受容体同定のためのスクリーニング法を考案・確立するとともに、具体的受容体機能を解析したので紹介する。 まず、HRGの全長配列C 末端にHRGの可動性を上昇させるスペーサー配列とBCAM由来の細胞膜貫通領域配列、さらに細胞内領域にHAタグをつないだ発現ベクターを構築し、HEK293T 細胞に遺伝子導入した。同細胞にスクリーニング対象として選抜され、細胞内にFlag タグを付加付された受容体候補遺伝子を共発現させた。一定時間後に細胞を回収し、細胞膜を可溶化後、抗HAタグ抗体でHRGの免疫沈降を試みた。沈殿物サンプルをSDS-PAGEにかけ、抗Flag抗体で共沈した受容体候補タンパクを検出・同定した。その結果、HRGと共沈するC-type lectin family 1A (CLEC1A) が強陽性バンドとして検出された。CLEC1Aの細胞外ドメインを組換えタンパク(exCLEC1A)として作製し、表面プラズモン共鳴でHRGとexCLEC1Aの直接結合を証明した。さらに、CLEC1A発現HEK293T細胞で、HRG添加依存的なタンパクリン酸化シグナルの検出に成功した。本探索法をAntithrombinにも応用し、複数の候補受容体を同定した。以上の結果から、多機能性血漿タンパクを細胞膜係留型のリガンドとする本法は、極めて優れた受容体探索同定法であると結論された。同定された受容体を標的とするモダリティ創薬について提案し、議論を喚起したい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298742739602816
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-s44-1
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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