当院に呼吸器疾患で入院した90歳以上の患者における有酸素運動の実施状況の調査

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タイトル別名
  • O-164 呼吸・循環・代謝④

抄録

<p>【目的】 身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡率が低いこと、更に高齢者においても歩行など日常生活における身体活動が、寝たきりや総死亡率を減少させる効果のあることが示されている。アメリカスポーツ医学会(ACSM)の示した運動推奨ガイドラインによると、高齢者を含む18歳以上の成人すべての年齢層において、中等度の有酸素運動を1日最低30分(1回10分以上に分けても良い)週5回以上継続して行うことが推奨されている。しかし、日本老年学会・日本老年医学会が定義する90歳以上の超高齢者においては、特に十分な運動が実施されていないように思われる。そこで、当院に呼吸器疾患で入院した90歳以上の超高齢者を対象としたリハビリプログラムにおいて、有酸素運動の実態を調査し、超高齢者における運動プログラムの改善について考えを報告する。</p><p>【方法】 対象は、令和4年1月1日から12月31日の間に呼吸器疾患で当院に入院し、理学療法または作業療法が処方された90歳以上の者とした。その中で有酸素運動の有無、内容についてリハビリ記録から調査を行った。歩行速度が記載されておらず、歩行距離のみ記載されたものは、サルコペニアの診断基準を参考に、480m(毎秒0.8mの歩行速度で歩いた距離)以下のものは10分未満と判断した。</p><p>【結果】 当該期間内に対象となった患者は、延べ85名(男性38名、女性47名)、平均年齢は92.78±2.64歳、平均入院日数は20.81±15.07日であった。そのうち、10分以上の有酸素運動を行った者は居なかった。</p><p>【考察】 当院の超高齢者リハビリプログラムにおいて、有酸素運動の不足が示唆された。確かに、入院や手術後の患者には慎重なアプローチが必要だが、結果を得るためには、適切な負荷が必要なことも重要である。超高齢者の有酸素運動の負荷量に関する研究は、渉猟し得た範囲では認められず、全体像を把握するため、今回は個別の状況を考慮せず、一律に運動負荷の調査を実施した。</p><p> 得られた結果から、リハビリ介入時期の問題、医療従事者やリハビリスタッフの認識不足、患者の意欲低下が原因として挙げられる。介入時期に関しては、当院が急性期であることを考慮するとやむを得ない環境であるようにも思われるが、10分以上の有酸素運動を行っている患者が数人は確認できてもよさそうである。むしろ、療法士の認識不足と患者の意欲低下の影響が結果により大きな影響を与えているように思われる。そこで、療法士の認識不足に対しては、医療従事者やリハビリスタッフの意識向上を図り、運動負荷量を再評価しながら、何よりも徐々に負荷を増やし、ACSMが提唱する1日最低30分(1回10分以上に分けても良い)週5回以上という必要量に近づけるアプローチが不可欠だと考える。また、患者の意欲低下も懸念されるところ、リハビリを通じて運動の重要性を伝え、健康と生活の質の向上を促すことが重要だと考える。</p><p> 特に呼吸器疾患を抱える患者にとって有酸素運動は重要であり、そのための運動プログラムの充実が求められる。リハビリ内容が患者の退院後の運動療法に影響を与えることを考慮すれば、超高齢者向けのリハビリプログラムには運動の重要性を配慮する必要がある。</p><p>【まとめ】 昨年1年間、当院に入院した呼吸器疾患の90歳以上の患者の有酸素運動について調査した。その結果、患者に対して行ったリハビリプログラムの中で十分な有酸素運動が実施できていなかったことが判明した。このため、療法士や患者の意識改革、訓練内容の見直し等が必要だと考えられる。</p><p>【倫理に関する記述】 本研究を行うにあたり、ヘルシンキ宣言の理念に基づき、個人情報の取り扱いに十分に配慮した。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298764873826176
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_164
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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