重度麻痺を呈する児の在宅での継続的な自主練習と保護者間での情報共有を目指して

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • O-065 小児・発達

抄録

<p>【目的】 急性脳症や脳室周囲白質軟化症等を罹患し麻痺を呈する児に対して、急性期病院退院後も在宅生活を送りながら医療や福祉サービスにてリハビリテーションが提供される。しかし、保護者や医療機関等双方の社会的背景により提供回数が少なくなりやすく、神経可塑性に基づいた神経ネットワークの再構築を目指す上で十分な量が提供されていない現状がある。また、自主練習を促すものの両親の就労や兄弟姉妹の育児、閉鎖的な環境により継続的に行える家庭は少ない。そこで、各家庭での継続的な自主練習を目的とした支援を行ったので報告する。</p><p>【対象および方法】 対象は、歩行補助具の導入が可能であり医療機関より自宅での自主練習を指導されていたが1月の自主訓練実施率30%以下の3才2カ月から5才4カ月の当児童発達支援事業所に通われる急性脳症2例、脳室周囲白質軟化症2例、脳出血1例の計5名。全ての児は、週に1回の頻度で医療機関による外来リハビリテーションを実施。粗大運動能力分類システムGross Motor Function Classification System:GMFCSレベルⅤ。方法は、事前に各医療・福祉サービスに自主練習の実施についての連絡を図った後、簡易的な歩行練習が可能な歩行補助具(ファイアフライ社製、アップシー小児用歩行補助具)を使用し、全身運動を目的とした歩行練習を指導する。別途理学療法士が介助する様子を動画で撮影し参考にしつつ、各々の可能なタイミングで自主練習を行った。また、LINE株式会社が提供するLINEを使用し保護者間での結果報告を各自行ってもらい、個別質問を理学療法士に問い合わせできる体制を構築した。毎月月末にweeFIMを評価。期間は令和4年6月6日から令和4年12月29日とし最終日に自由記述回答によるアンケートを実施した。</p><p>【結果】 アンケートの結果より各家庭の一月の平均実施率は64%、父親80%母親20%が実施。開始時weeFIMの平均は18.4点であったが、終了時は平均28点であり、特に移動項目およびコミュニケーション項目での点数増加がみられた。児によっては、言語聴覚療法の実施が無いにも関わらず嚥下機能の大きな改善がみられ、さらに移動項目に関しては、全ての児に関して全介助から最大介助以上となった。</p><p>【考察】 脳損傷後の回復メカニズムはhebb則に従うとされており、理学療法では神経可塑性を目的にシナプス結合を強化するため実施頻度も考慮しなければならないと考える1)。そのため、一定の頻度を提供する為には、保護者による支援も重要である。保護者自ら歩行距離や歩容などの目標を立て継続的に課題指向型の介入ができた事により、weeFIMの結果からも移動項目だけでなくその他の項目も含め点数が向上したのではないかと考える。また、就労しているにも関わらず継続的に実施できた背景には、各保護者間での情報共有が挙げられ、アンケートの結果からも実施方法の模索や効果の共有、目標設定など情報を共有化した事により、同じ課題を持つ保護者の目標は明確化された事が考えられる。児に対するリハビリテーションは、医療や福祉サービスで専門的に実施される必要がある反面、児の神経可塑性を目的に実施頻度を高める事も重要である。自主練習といった継続が困難である課題に対し、保護者が同じ環境の方と情報を共有し取り組む事で、より継続的に前向きに取り組めたらと考える。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、家族に口頭と書類にて十分な説明と同意を得た。また、個人情報の取り扱いにおいては、個人情報保護に十分配慮して管理を行った。</p><p>1)西条久夫:リハビリテーションのためのニューロサイエンス脳科学からみる機能回復</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298764873939968
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_65
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ