グアテマラの障害児者施設におけるJICA 海外協力隊活動の報告

DOI
  • 津 玄徳
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • O-069 小児・発達

抄録

<p>【背景】 グアテマラ共和国(以下、グアテマラ)は、一人あたりの国民総所得において4,940米ドル、人間開発指数において0.63であり、地方の貧困や医療福祉支援の不足などが大きな問題となっている。栄養問題においては、グアテマラ国内で5歳児未満の慢性栄養失調率が47%と世界6位、中米地域1位である。グアテマラ北西部にあるウエウエテナンゴ県アグアカタン市では、慢性栄養失調率が50%を超え、リハビリテーションの需要は栄養問題に起因する小児疾患が大多数を占める状況となっている。同市の障害児者協会は、市内唯一のリハビリテーション施設であり、理学療法士が1名、特別支援教育員が3名在籍しているが人的・物的資源が不足しており障害児者への支援不足から社会参加への機会損失が生じている。限られた資源で支援を実現していくため、家族・地域住民・学校教員等を巻き込んだ包括的な支援であるCommunity Based Rehabilitation(以下、CBR)に基づいた支援が必要とされておりJICA海外協力隊員の要請へと至った。</p><p>【目的】 本演題では、グアテマラの障害児者協会で行なった理学療法士活動について報告・検討することを目的とする。</p><p>【活動内容】 配属先の障害児者協会は、日本の外来リハビリテーションの様な利用形態である。理学療法サービスの利用者は幼児から高齢者まで幅広いが、全体の67%が小児疾患患者であった。これを基に主な活動として ①小児リハビリテーションの充実 ②障害児者や家族の疾病・健康・予防に対する意識改革 ③地域住民や学校への健康・障害に対する理解促進 ④山間部地域への訪問診療を行った。また、都市部アンティグア地区の福祉用具製造団体、スペインのカタルーニャ州の障害者支援団体も参画し、障害児者への福祉用具提供を行った。その他、栄養士や助産師隊員と多職種連携を図り、限られた資源の中でCBRを展開した。</p><p>【活動結果】 活動のメインとなる小児リハビリテーションの充実に関しては、同僚指導・技術移転・大学での学生指導を行うことで、より専門的な理学療法の提供が可能となりつつあると感じられた。また、約1年間の継続した障害理解講座・各コミュニティ訪問・プロモーション活動により同士における理学療法の認知度向上を図り、施設利用者数も前年度から約2倍に増加することができた。継続した活動により障害者理解が促進され、リハビリテーションの必要性が浸透してきたと感じられた。</p><p>【結論】 現地で活動を継続する中で小児疾患患者の原因について調査を行い、出生時障害に起因する脳性麻痺児が全体の76%と非常に多いことが分かった。グアテマラは、妊産婦死亡率・新生児死亡率・乳児死亡率が周辺他国と比較すると高い数値となっており、これらの原因は妊産婦の栄養に関する知識不足・マヤ民族文化による独特な出産方法が大きな問題であると考えられる。具体的には、妊産婦の劣悪な食生活による葉酸などの栄養不足、伝統的産婆(医療資格を持たないマヤ文化の産婆)による出産支援などが脳性麻痺や二分脊椎患者の増加に影響していることが示唆された。これらの背景を基に理学療法分野だけでなく、障害や疾病についての教育・母子保健・栄養など様々な視点から多職種と連携し、継続的で包括的なアプローチが必要であることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮】 本演題で発表する内容は福岡リハビリテーション専門学校倫理委員会の承認を得た。(承認番号:23001)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298764873940864
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_69
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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