長いベッド上生活で諦めていた屋外散策が多職種連携により実現できた事例

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タイトル別名
  • O-088 地域リハビリテーション①

抄録

<p>【はじめに】 長期臥床状態にて廃用が進行し、座位や立位をとれなくなると活動範囲は著しく狭小化し、個人の自由は極めて制限されてしまう。セラピストとして関わる中で多職種と連携し、患者個人の想いを尊重し実現できた事例を報告する。</p><p>【事例紹介】 70歳代男性 診断名:慢性Ⅱ型呼吸不全 既往:肺癌、肺切除歴あり、シェーグレン症候群</p><p> 以前はマラソンや登山、海外旅行を趣味とされ自ら庭の木々を剪定し、様々な花を植え、自宅前の道路沿いに紫陽花を植えたり梅の木を400本植樹したりとガーデニングに強い思い入れがあった。</p><p> X-3年COPDにて入院、12月に退院後訪問リハビリ介入開始。</p><p> 他、診療・看護・歯科と訪問サービスを導入し、自宅療養中に悪化と寛解を繰り返し運動機能は徐々にレベルダウンされる。</p><p> X-2年入退院を繰り返し、10月BIPAP装着管理のため入院。退院後はHOTにて酸素3L流入しつつNIPネーザルS/Tモードで常時呼吸管理を行う。</p><p> X-1年末、歩行時強い息切れ、疲労を伴うようになり、訪問入浴を導入。翌年以降ベッド上から動かれなくなり、食欲著しく低下し抑うつ症状も見られ、急速にフレイルが進行。主治医からはX年のGWまでもつかどうかとまで言われていた。そして本人から丹精込めて作った庭や紫陽花、梅林を近くで見たいという外の世界への想いが聴き取られるようになった。</p><p>【経過】 屋外散策を実行するにあたり、まず担当ケアマネージャー(以下、CM)に相談した。そして主治医に計画の説明と許可をもらい、担当訪問看護師に内科的側面からの屋外散策の可否を話し合った。また屋外散策用に車椅子の試用を福祉用具業者に依頼し、本人に試乗してもらった。加えて長時間の座位に耐えうるか訪問時間内に耐久性テストを実施した。本人宅にて担当者会議を行い当日の各自の立ち回り、注意点、屋内段差の移送方法を車椅子用いて実演しリハーサルを行った。そしてX+1年5月の暖かな日に決行となった。</p><p>【結果】 屋外散策は本人、家族3名(妻・娘・娘婿)、PT・OT・Ns・CM・福祉用具業者各1名ずつの計9名で実行した。車椅子はリクライニング式でバックレストとレッグレストが連動する軽量化タイプを選択。車椅子への移乗はPTが全介助で行い、ネーザルマスクを外しボンベ式のHOTへ付け替えた。玄関を出て庭の木々や花々を眺め、梅の収穫作業に来ていた知人達と会話を楽しまれ、自宅前道路を散歩しながら紫陽花や梅林の様子を眺めて回った。その間Nsが定期的に本人の状態確認とバイタルチェックを行いながら見守った。自宅ベッドに戻ると、「景色が色々変わっていたが楽しかった。ありがとう」という言葉を頂いた。後日庭の草木の除草・剪定を業者に依頼され、訪問中に起立運動を希望、臥位での自主訓練に熱心に取り組まれるなど運動意欲の向上見られ、年末にかけては夜に好きだったお酒を嗜まれるなど様々な面で意識の変化が見られた。</p><p>【考察】 平成27年3月にまとめられた「高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書」によると、地域リハビリテーションの課題として「訪問リハビリや通所リハビリなどの居宅サービスが一体的・総合的に提供できていない。また、医療と介護の連携や介護保険の中での各サービス間や、専門職種間の連携が不十分である。」と挙げられている。本症例においては多職種間での連携によって本人の願いを実現でき、様々なプラス効果を生むことが出来たと考え、その重要性を再確認する事例となった。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 本発表を行うにあたり、ヘルシンキ宣言に則り本人及び家族に十分に説明を行ったうえで同意を得ている。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298764873954432
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_88
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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