高血圧ラット血管壁内平滑筋細胞の構造変化の観察
抄録
<p>大動脈血管壁は一般的に内腔から,内膜,中膜,外膜の3層に大別されており,弾性に富む中膜が発達,それが壁厚の大半を占めている.中膜は主にコラーゲン,エラスチン,平滑筋細胞の3つの要素から構成されており,エラスチンと平滑筋細胞の層が同心円状に交互に積層されている.高血圧状態に長期的に曝されると,壁が肥厚することが知られており,この現象は血圧によって生じる円周方向応力を一定に保つように平滑筋細胞が適応した結果と考えられるが詳細は未だ不明である.このメカニズムの一端の解明を目指し,平滑筋細胞の微細構造変化を観察した.腎動脈にクリップをかけて実験的に高血圧ラットを作り,16週間経過後に胸大動脈を摘出して加圧固定し,厚み200 µmのリング状試料を得た後,細胞骨格の一つであるアクチンフィラメントと細胞核を染色し,共焦点レーザ顕微鏡で観察した.週齢を合わせた正常血圧群も同じ手順で実験した.正常血圧群と比べて高血圧群の平滑筋層は肥厚しており,細胞内のアクチンもより発達していた.正常血圧群の平滑筋細胞核内ではクロマチンが主に核膜周囲に分布していたが,高血圧群では核内のクロマチンは満遍なく分散していた.クロマチンが満遍なく分散していることは転写が盛んであること,ひいては蛋白の合成が盛んであることを示す.高血圧による力学刺激により,アクチンなどのタンパク合成能が向上したことを示す結果が得られた.</p>
収録刊行物
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- 生体医工学
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生体医工学 Annual61 (Abstract), 277_1-277_1, 2023
公益社団法人 日本生体医工学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390298820567346944
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- ISSN
- 18814379
- 1347443X
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可