蝸牛の感覚上皮帯を模倣した次世代型人工内耳の創成

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抄録

<p>世界規模で高齢化が進展する中,難聴は認知症に対する最大の危険因子であると報告されている.また,約1,000人に1人の新生児が聴覚障がいであり,オーディオ機器の普及により若年層の難聴も急増している.全世代に対する聴覚ケアは焦眉の問題であるが,感音性難聴の治療法である人工内耳には,可聴周波数帯域の制限や聴神経の電気刺激効率に課題が残る.これまでに,感音性難聴に対する未来医療に関連し,機械工学的考究と微小電気機械システム (Microelectromechanical systems: MEMS) 技術に基づき,蝸牛の感覚上皮帯に立脚した次世代型人工内耳を開発してきた.微小パターン電極群を備えた台形状の圧電薄膜から成り,基底板と内・外有毛細胞の機能を再現する.基底板を模倣した構造により,入力音の周波数を識別するが,人工感覚上皮帯は蝸牛を満たすリンパ液中に設置されるため,流体構造連成振動を考慮した実験および理論から応答周波数帯域を最適化した.また,人工感覚上皮帯には生体適合性に優れた非鉛・有機圧電材料であるPVDF-TrFEを用いており,圧電効果によって内有毛細胞の音響/電気信号変換を実現する.一方,電気出力が微弱であり,聴神経の電気刺激が困難である.そこで,外有毛細胞を模擬した振動制御系を実装し,最適な信号増幅機構を付加した.人工感覚上皮帯は,聴覚ケアへの臨床応用に資するとともに,医工学の観点から聴覚生理の理解を深められることが期待される.</p>

収録刊行物

  • 生体医工学

    生体医工学 Annual61 (Abstract), 91_1-91_1, 2023

    公益社団法人 日本生体医工学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298820567450112
  • DOI
    10.11239/jsmbe.annual61.91_1
  • ISSN
    18814379
    1347443X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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