大学附属病院における総合診療の確立を目指して

書誌事項

タイトル別名
  • ダイガク フゾク ビョウイン ニ オケル ソウゴウ シンリョウ ノ カクリツ オ メザシテ

この論文をさがす

抄録

医学では未だにパーツに分ける還元論的手法が隆盛を極め,臓器還元論,疾病還元論が大学病院の診療科構成の基本となっている。医師が学ぶべき内容が膨大となり,医師の能力を超えてしまうこと,また,患者の権利意識の高まりから,無用なトラブルを避ける意識もはたらき,得意な疾患のみを診療する「過度な専門医志向」が目立ってきている。 そのため,臓器側から患者にアプローチすることが多く,症候を系統的に解釈する思考回路が使われないことが多い。特に画像診断,検査結果を重視する医療となり,形態異常の拾い上げは十分であるが,機能性疾患の対応は極めて不十分となっている。 生体反応の中心はフィードバック機構であるが,そのため,病態は周期的に変化する。 生体を分割せずに考えていくと,各臓器に生じる疾患にも共通点を見出すことができる。 とくに現在の状態から,将来の状態を予想するロジスティック写像を用いて解釈すると,急性疾患,慢性疾患,変性疾患,悪性疾患など,各臓器の疾患も,同じ固有値の変化として表現できる。 還元論から脱却し,異なる臓器に共通する単純な法則から解釈できる医療が,我々の目指すところである。 医学部を目指したころの志を思い出し,原点に帰ることが,総合診療医育成のポイントと考えている。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ