日本民主化における言語改革の背景と意義

書誌事項

タイトル別名
  • Background and Significance of Language Reform in Relation to Democratization in Japan

抄録

本稿は,占領期に実施された言語改革の政治的側面を検討するものである。連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は,複雑な日本語表記システムが民主化のための情報アクセスへの障害になると考え,言語改革を推し進めようとした。とりわけGHQによる民主化のための情報発信を日本人が理解できないことが問題視された。そのため,GHQが想定したリテラシーとは,新聞や憲法などを読んで理解できる能力であった。しかしながら,占領体制が安定し民主主義が浸透するなか,民主化のための情報発信も減少したことで,言語改革はローマ字化といった抜本的なものではなく,部分的な改革に終わった。同様に,リテラシーを測るための「日本人の読み書き能力調査」は,社会生活を送るうえでの最低限の能力を測るものへと変節した。しかしながら,漢字の削減などの言語簡易化によって民衆の情報アクセスは容易になっただけでなく,GHQの意向を斟酌した日本側の自主的な動きによって天皇の言葉や法律が口語化したことにより,民主化の動きを加速させたと考えられる。

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