当院で経験した長径30cmを超える巨大卵巣腫瘍の3症例

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タイトル別名
  • Three cases of giant ovarian tumors exceeding 30 cm in length experienced at our hospital

抄録

巨大卵巣腫瘍は血栓症の合併や腫瘍摘出時の循環動態の変動,術後の再膨張性肺水腫による呼 吸不全など周術期管理に留意が必要である.今回,呼吸や循環動態へ影響を及ぼす可能性のある巨大 卵巣腫瘍を3例経験したので報告する.手術は全症例で局所麻酔下に小開腹し,腫瘍内容液を緩徐に吸 引し循環動態の安定などを確認後,全身麻酔に切り替えた.症例1は52歳,1妊1産.腹部膨満,体動困 難で前医に搬送され,CTで直径約40 cmの卵巣腫瘍を指摘された.呼吸状態悪化し気管挿管され,当 院に転院搬送された.十二指腸潰瘍による高度貧血も合併していた.腫瘍内容液を約20 L吸引し右付 属器摘出術を施行した.術後抜管するも喀痰排出できず気管切開した.また,術後に廃用症候群を発 症し,リハビリ目的に転院した.症例2は44歳,0妊.自覚症状はなく,異常な腹部突出を周囲に指摘 され受診した.MRIで直径約46 cmの右卵巣境界悪性腫瘍の疑いで,合併症は認めなかった.腫瘍内 容液を約20 L吸引し右付属器摘出術を施行した.術中迅速検査で粘液性境界悪性腫瘍のため根治術を 行い,術後経過は良好であった.症例3は86歳,2妊2産.腹部膨満,食思不振で前医に搬送され,肺炎 の診断で入院した.CTで巨大卵巣腫瘍,深部静脈血栓症を指摘され当院に転院搬送された.MRIで直 径約30 cmの右卵巣良性腫瘍の疑いであった.手術時は循環器科でIVCフルターを挿入し,卵巣腫瘍内 容液を約10 L吸引し,両側付属器摘出術を施行した.術後経過は良好でリハビリテーション目的に転 院した.巨大卵巣腫瘍の周術期管理を安全に行うためには,術前の深部静脈血栓症の評価やIVCフィ ルター留置の必要性,手術時の循環動態変動,術後の再膨張性肺水腫や廃用症候群の対応を検討する必要がある.〔産婦の進歩76(1):45―53,2024(令和6年2月)〕

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298975425367168
  • DOI
    10.11437/sanpunosinpo.76.45
  • ISSN
    13476742
    03708446
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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