無下顎耳頭症の一例

DOI
  • 田﨑 園子
    福岡歯科大学成長発達歯学講座障害者歯科学分野
  • 原 麻莉
    福岡歯科大学成長発達歯学講座障害者歯科学分野
  • 香川 豊宏
    福岡歯科大学診断・全身管理学講座口腔画像診断学分野
  • 小島 寛
    福岡歯科大学成長発達歯学講座障害者歯科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A Case Report of Agnathia-otocephaly Complex (Otocephaly)

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抄録

<p>無下顎耳頭症(Agnathia-otocephaly complexあるいはOtocephaly)は第一鰓弓由来の発生異常で,下顎が欠損または低形成で,全前脳胞症や内臓異常を伴うこともある疾患である.長期の生存例の報告は少ないため,出生後の歯科的な治療法に関しても確立されていない.</p><p>症例は初診時生後11カ月の男児.在胎28週で出生した早産,低出生体重児.2歳までの成長過程で低体重,低身長および運動発達の遅れを認めた.顔貌所見として眼瞼裂斜下,両側耳介の低位を認め,小口で下唇の赤唇を認めなかった.CT画像より下顎骨の完全欠損および下顎周囲の筋の形成不全を認めたが,上顎はすべての乳歯および第一大臼歯の石灰化を認めた.また,CT画像上で大唾液腺の構造は不明であったが,流涎を認めたことから唾液腺の機能はあるものと考えられた.成長の過程で歯の萌出遅延を認めたが,模型計測で上顎乳前歯の歯冠近遠心幅径は日本人小児の平均値+1SD前後と比較的大きな値を示した.</p><p>無下顎耳頭症は長期生存例の報告が少ないが,出生後の気管切開や経管栄養などの対応によって生存した本症例では,歯が萌出し,流涎もあることから,一般的な経管栄養患者と同様に歯石の沈着による誤嚥性肺炎について注意する必要がある.これに加え,口が非常に小さく,成長に伴い開口量の増加はみられたものの,口腔内の確認や処置などの歯科的対応が非常に困難になることが予想されることから,家族への予後説明や医科との連携が重要であると考えられた.</p>

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