腸内細菌叢による肝臓シトクロムP450(Cyp)および生体薬物代謝能への影響
書誌事項
- タイトル別名
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- Effects of the gut microbiota on hepatic cytochrome P450 (Cyp) and in vivo drug-metabolizing capacity
抄録
<p>【背景と目的】近年、腸内細菌叢の新たな機能として薬物代謝の制御が提唱されている。これまでに腸内細菌叢の存在が肝Cyp、特に主要分子種であるCyp3aの活性や発現量に影響を与えることが報告されている。本研究では、腸内細菌叢が肝Cypの修飾を介して生体の薬物代謝能に影響を与えるか無菌(GF)およびSPFマウスを用いて検討した。さらに、腸内細菌叢構成の個人差が肝Cyp活性や発現量に影響を与えるかヒトフローラ(HF)マウスを用いて検討した。</p><p>【方法】GFおよびSPFのBALB/cマウスを用いて、in vitro(肝ミクロソーム、各群n = 5)およびin vivo(各群n = 6)でCyp3aの基質であるミダゾラムの代謝活性を評価した。また、健常なヒト(ドナー、2名)の糞便を用いてGFのBALB/cマウス(レシピエント、各群n = 8)をそれぞれヒトフローラ化し、腸内細菌叢解析、肝Cyp活性および遺伝子発現量の定量を行った。</p><p>【結果】In vitroミダゾラム代謝活性は、SPFマウスと比較してGFマウスでは有意に低かった。In vivo試験では、AUCおよび血漿中濃度半減期は、SPFマウスと比較してGFマウスで約4倍であった。また、投与180分後の脳内ミダゾラム濃度は、SPFマウスと比較してGFマウスで約14倍高かった。さらに、HFマウスを用いた検討では、レシピエント群間で腸内細菌叢が明確に異なり、肝Cyp3a活性およびCyp3a11発現量についても顕著に異なっていた。</p><p>【結語】マウスにおいて腸内細菌叢が肝Cyp3a活性と薬物の血中および組織内濃度に顕著な影響を与えることが示された。また、HFマウスの解析により健常人の腸内細菌叢の個人差が肝Cyp3a活性に影響を与えることが示された。以上のことから、ヒトにおいても腸内細菌叢の差異が薬物代謝能、ひいては医薬品の作用や副作用の発現に影響を与えることが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P1-009E-, 2023
日本毒性学会