メチル水銀は脳毛細血管内皮細胞の密着結合構成分子の発現を抑制する

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  • Inhibition of tight junction molecules in human brain microvascular endothelial cells by methylmercury.

抄録

<p>【目的】水俣病の原因物質であるメチル水銀は、中枢神経系への障害を引き起こすことが知られている。血管は生体内に普遍的に存在しており生体の恒常性維持に機能する。脳の毛細血管内皮細胞は、外来異物の侵入を防ぐ血液脳関門(BBB)と呼ばれる生体バリアを形成している。BBBは脳組織を体循環由来の異物や組織から隔絶し、栄養成分の選択的な供給や血管透過性の制御などを通じて脳の恒常性を維持している。これまでにメチル水銀を投与したラットにおいて末梢由来成分であるIgGが脳内に移行することが報告されており、メチル水銀がBBBの脆弱化を引き起こす可能性が指摘されているが、その詳細に関しては未だ不明である。そこで本研究では、メチル水銀がBBBの構成要素である脳毛細血管内皮細胞の密着結合(TJ)に与える影響を培養血管内皮細胞を用いて検討した。【方法】ヒト脳毛細血管内皮細胞(HBMEC)をメチル水銀で処理し、遺伝子発現量はリアルタイムRT-PCR法で、タンパク質発現量はウェスタンブロット法で測定した。【結果・考察】メチル水銀でHBMECを処理し、TJ構成分子の発現に与える影響を検討した。その結果、メチル水銀はBBBを構成するclaudin-1, 3, 5, ZO-1, 2, 3, JAM-A, B, C, ESAMのmRNA発現には影響を与えず、claudin-12, occludinのmRNA発現レベルを濃度依存的および時間依存的に有意に低下させた。またメチル水銀はoccludinのタンパク質発現レベルを低下させた。同様に、細胞同士の接着制御に寄与する接着結合構成分子の発現に与える影響を検討したが、メチル水銀による影響は認められなかった。occludinはBBBの透過性制御に関与することから、メチル水銀によるoccludinの発現抑制は、血管透過性亢進などに寄与する可能性が考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299395584641280
  • DOI
    10.14869/toxpt.50.1.0_p2-137
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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