ヒト肝細胞キメラマウスを用いたフェノバルビタール投与によるYAPを介した肝細胞増殖の評価
書誌事項
- タイトル別名
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- Validation of a human model of cell proliferation via YAP signaling by administration of Phenobarbital
抄録
<p>化合物投与によりげっ歯類で発がんが認められた場合、作用機序(MOA)を解明し、それに基づいて種差の解析を行いヒトとの関連性を解明する必要がある。げっ歯類の肝臓において、核内受容体であるconstitutive androstane receptor(CAR)の活性化により肝細胞増殖が亢進し、肝細胞腫瘍を誘発するMOAが知られているが、ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス)を用いた研究において増殖亢進は認められていないことから、ヒトへの外挿性のないMOAと考えられている。近年、CARはYAP活性化を介してげっ歯類で肝細胞増殖を引き起こすが、ヒトでは活性化は生じないことが明らかになっている。しかし、PXBマウスがヒトYAPの機構を正確に反映したモデル動物であるか否かはこれまでに確認されていなかった。そこで、CD-1マウスおよびPXBマウスにCARを間接的に活性化するPhenobarbital(PB)を投与し、YAP活性化に着目した比較検証を実施した。 PBを100 mg/kgの投与量でCD-1マウスに8日間反復経口投与し、肝臓中の遺伝子発現を経時的に解析した結果、YAP標的遺伝子の発現変動が認められた。一方、CD-1マウスにおいてYAP活性化のピークとなるポイントでPXBマウスにおける遺伝子発現を確認したところ、有意な変動は認められなかった。さらに、Ki-67や細胞周期関連遺伝子の発現変動は、CD-1マウスのみで認められたことから、細胞増殖亢進はCD-1マウスのみで生じたことが示唆された。本研究により、PXBマウスではPB投与によるYAPの活性化と肝細胞増殖亢進が認められないことが明らかとなった。このことから、PXBマウスはヒト肝細胞の機能を適切に反映した有用なヒトモデル動物であり、CARを介したMOAのヒト外挿性評価に適切なモデルであることが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 50.1 (0), P2-165-, 2023
日本毒性学会