多フッ素化アルキル化合物の生体影響:動物種差の観点から

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タイトル別名
  • Toxicological effects of poly- and perfluoroalkyl chemicals: Aspect of species difference

抄録

<p>ポリ-、ペルフルオロアルキル化合物 (PFAS) は化学合成され、撥水・撥油剤や乳化剤、防汚剤、消火剤など様々な用途に利用されてきた。PFAS は化学的に極めて安定であるため、環境中に長期間残留する。土壌、地下水(生活用水)、食品や生活用品を介してPFASに曝露すると考えられ、ヒト血液中に検出されることから健康影響への懸念が高まっている。PFAS の毒性研究において、動物実験やin vitro 実験により、動態や毒性が明らかにされており、肝毒性、血漿脂質への影響、生殖・発生への影響、甲状腺ホルモンへの影響、免疫毒性などが報告されているが、これらの研究は代表的なPFAS であるペルフルオロオクタン酸(PFOA) やペルフルオロオクタンスルホン酸 (PFAS) を対象としており、他のPFAS に関するデータは乏しい。一方、一般人を対象とした疫学研究から、血清コレステロール値の上昇、出生児の軽微な低体重、高血圧リスク上昇、小児のワクチン接種効果の低下、腎臓及び精巣がんのリスク増加などが示されている。  動物実験やin vitro実験で報告された毒性およびそのメカニズムは疫学調査の結果と一致するものもあるが、人では認められないものもある。この違いの原因として動物種差があげられる。PFOAやPFOS の血液中の半減期は、ラットではそれぞれ10日前後、30日前後であるのに対し、ヒトではそれぞれ3年前後、6年前後と報告されており、マウスの値もラットに近い。また、サルはそれぞれ21日、132日と報告され、ヒトとは大きく異なっている。PFASの分布や排泄に関与するトランスポーター群が明らかにされ、動物種差の一部はこの違いで説明できる。毒性発現に関わる分子を同定し、ヒトへ外挿する手法での解明も進んでいる。一般に動物実験で用いる用量は人の暴露量に比べて高いため、ヒトの有害性の予測において留意する点である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299395584844416
  • DOI
    10.14869/toxpt.50.1.0_s26-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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