深海乱流混合のパラメタリゼーションに関する研究

  • 伊地知 敬
    東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on parameterizations of turbulent mixing in the deep ocean

抄録

<p>深層海洋大循環を把握する上でブラックボックスとなっている深海乱流混合の全球分布を解明するためには,グローバルに観測可能なスケールの大きい物理量から乱流混合強度を推定する,いわゆる,パラメタリゼーションの手法に頼らざるを得ない。しかしながら,既存の乱流パラメタリゼーションはいくつかの問題点を抱えている。海洋の中・深層における乱流散逸率のパラメタリゼーションは,ファインスケールの流速シアーと密度ストレインの両方の情報を基に内部波スペクトルの歪みを考慮しているものの,単色波近似を広帯域な内部波スペクトルに対して適用してしまっているため,単色波近似が有効となる近慣性重力波が卓越する内部波場で,かえって乱流散逸率を過大評価してしまう。さらに,この乱流散逸率から乱流混合強度を見積もる際に必要となる乱流混合効率は,約20%として従来扱われているが,乱流イベントの駆動メカニズム・発達段階に応じて異なっており,特に,間欠的な強乱流イベントが対流不安定によって駆動される高密度海水のオーバーフロー域では50%にも達してしまう。本稿では,筆者がこれまで指摘してきた既存の乱流パラメタリゼーションの問題点とその改善策を概説する。</p>

収録刊行物

  • 海の研究

    海の研究 33 (1-2), 1-16, 2024-03-15

    日本海洋学会

参考文献 (69)*注記

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