小腸移植周術期の栄養管理

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説明

<p> 小腸移植は、長期にわたる重度栄養障害を背景とする症例が移植適応となる。さらに、移植後においてもグラフト臓器の状態がレシピエントの栄養状態に直結する臓器移植領域でもある。当然、小腸移植の最終的ゴールは、静脈栄養(PN)からの完全離脱と栄養状態の改善にある。わが国における小腸移植後患者のQOLについて、移植後1年以上経過したグラフト生着患者では、全員が少なくとも部分的にPNから離脱し、約9割が完全離脱可能となっている。しかしながら、ひとたび拒絶反応が生じると、小腸粘膜の脱落を反映して著明にシトルリン値が低下して吸収不全を生じ、その制御は困難な場合が多い。当科では、これまでに5例の腸管不全患者に脳死小腸移植を実施した。内訳は短腸症1例、腸管吸収不全1例、腸管運動障害3例であった。いずれも移植後経口摂取が進み、2-3か月以内でPNからの離脱が得られている。しかし、うち2例では制御困難な拒絶反応からPN管理を再導入し、最終的にはグラフト摘出に至った。残りの3例は、PN不要な状態が維持されており、大幅な栄養状態の改善からQOL向上が得られている。今後の課題として、本邦では、胃や十二指腸を含めた多臓器移植が施行できず、単独小腸移植(結腸含む場合あり)となるため、術後にも残存した自己消化管機能を考慮した管理を継続していく必要性があり、思うように経口摂取が進まない可能性が懸念される点などにある。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s131_1-s131_1, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673814996096
  • DOI
    10.11386/jst.58.supplement_s131_1
  • ISSN
    21880034
    05787947
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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