異時性肝小腸移植の経験から考える肝小腸同時移植の必要性

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抄録

<p>【背景】本邦における脳死肝小腸同時移植は肝臓希望者選択基準を考慮すると実現性が低く、異時性移植が多く行われてきたが、どちらを先行するにしても憂慮すべき周術期の課題は多い。今回当科における異時性肝小腸移植の経験から、解決すべき課題について考察したい。【症例】9歳女児。日齢6から下痢が持続し、小腸粘膜の病理所見から微絨毛封入体病(MVID)と診断された。中心静脈栄養(TPN)を併用しても体重-3SD、身長-5SDで推移し、7歳から肝障害に伴う出血傾向や病的骨折を認めた。8歳9か月時にMELDスコア19点、小腸はstatus 2で脳死肝小腸同時移植へ登録したが、急激に肝不全へ進行したため父親をドナーとする血液型不適合の生体肝移植を先行した。胆道は小腸移植に備えてduct-to-ductで再建した。肝移植後も腸管不全に対するTPNが必要なため徐々に脂肪肝が増悪して再度肝不全の状態となったが、肝移植後4ヶ月で脳死小腸移植に至った。小腸移植後20日でTPNから離脱し、肝不全も軽快した。現在小腸移植後10ヶ月で肝機能増悪や拒絶反応はない。【考察】本症例の肝不全進行が原疾患によるものか、TPNに伴う肝障害かは不明だが、肝移植単独での長期生存は困難であり、小腸移植までの間隔に課題が残る。MVIDのように肝・小腸共に病変を呈する疾患では同時移植や多臓器移植の必要性が高い。また、腸管不全関連肝不全は急速に増悪することが多く、より移植実現性の高いシステム構築が求められる。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s205_2-s205_2, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673815096064
  • DOI
    10.11386/jst.58.supplement_s205_2
  • ISSN
    21880034
    05787947
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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