生体小腸移植後8年で慢性拒絶反応のためにグラフト摘出となった一例

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抄録

<p>【緒言】小腸移植の短期成績については他の臓器移植と遜色のない値まで近づいているが、長期生存・生着は不十分な結果といえる。グラフト機能不全のためグラフト摘出に至った症例を経験したため報告する。【症例】症例は腸管神経節細胞僅少症を原疾患に生体小腸移植を施行した思春期男性。術直後に急性拒絶に対してステロイドパルス・サイモグロブリンによる治療を要した。その後は安定した経過であり、術後2年目に人工肛門閉鎖、中心静脈栄養から離脱した。しかし、術後5年目頃より免疫抑制剤濃度が不安定となり、服薬コンプライアンス不良の可能性が疑われた。術後7年目にグラフト粘膜の炎症所見と腸管壁全体の腫脹を認め、ステロイドパルスとサイモグロブリンによる治療を行い、グラフトの炎症は改善した。その後、再びグラフト粘膜に潰瘍病変が多発し、その数ヶ月後には炎症の進行と腸管の狭窄を認めた。CTでは全移植腸管の著明な浮腫を認めた。インフリキシマブの投与を2回行ったが、内視鏡所見上明らかな改善を認めず、腹痛の増強と発熱を認め、コントロール困難な慢性拒絶反応と診断しグラフト腸管を摘出した。病理では漿膜層まで及ぶ炎症所見であった。残存自己腸管はTreitz靭帯から20cmとなり、短腸症に対しGLP-2製剤投与と在宅静脈栄養を含めた腸管リハビリテーションを実施している。【結論】小腸移植患者の予後向上には社会的なサポートも含めた多面的なプローチが必要である。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s265_2-s265_2, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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