小児生体肝移植に先行する腸管除菌プロトコールの改変が臨床予後に与える影響に関する研究

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抄録

<p>目的</p><p>小児肝移植患者では細菌感染症の頻度がほかの臓器に比べ高く、多くの施設で移植前に内服抗菌薬の投与が行われてきた。一方、抗菌薬適正使用や、正常細菌叢の維持がもたらす正の効果の観点から、肝移植に先立つ腸管内除菌は不要と考えられるようになってきている。そこで本センターでは2022年に移植前の腸管除菌プロトコールを廃止した後、小児肝移植患者が受けた臨床上の影響について過去データと比較検討することを目的とした。</p><p>方法</p><p>2015年1月から2023年3月までに初回単独生体肝移植手術を受けた 18歳未満の小児患者が対象である。2015年から2022年までに肝移植術を受けた患者 (pre-medication group, n=372)は原則全例カナマイシンとミコナゾールを内服した。2023年1月以降 (no pre-medication group, n=14) は、これらの投薬を受けずに移植手術を受けた。その他周術期抗菌薬(アンピシリン+セフォタキシム術後48時間投与)や、術前の評価方法などに変更はない。この2群間において、移植後1か月以内の血流感染症および急性拒絶の頻度を比較した。</p><p>結果</p><p>肝移植後1か月以内における、血流感染症の頻度はそれぞれ35/372 (9%)と1/14 (7%)、急性拒絶の頻度は139/372 (37.3%)と6/14 (42.9%)であり、いずれも差を認めなかった。</p><p>考察</p><p>術前の腸管除菌プロトコールの廃止による明らかな副次効果は認めなかったが、プロトコール改変後の症例をさらに集積し、さらに検証を続ける予定である。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s266_3-s266_3, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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