ドナー肺を体外肺灌流と10℃保存した後に両側肺葉移植を施行した一例

DOI

この論文をさがす

抄録

<p>【はじめに】肺移植における全肺虚血時間は、再灌流障害や移植肺機能不全のリスクにより8時間以内とする方針となっているがドナー肺を10℃で保存することにより、ドナー肺の機能を長時間維持できうることが報告された。今回、体外肺灌流(EVLP)と10℃保存を併用し、約24時間の全肺虚血時間となった両側肺葉移植の一例を経験したので報告する。【症例】ドナーは37歳男性で脳死患者であった。X-1日 にドナー肺摘出手術が行われ、午前9時30分循環停止とし、両側肺が摘出された。同日午後2時52分 EVLPが開始されたが、両側下葉の浮腫と酸素化不良が判明した。両側上葉と中葉は良好な機能を示していため両側肺葉移植の方針とし、サイズミスマッチを考慮し当初予定していたレシピエントを変更した。EVLP終了後の午後8時よりドナー肺を10℃の保冷庫で静置した。その間レシピエントの術前検査を行い、翌X日午前6時30分に肺移植手術開始となった。手術は、クラムシェル開胸の後にcentral VA-ECMOを確立した午前8時に右肺葉移植が開始され、午前9時に右肺潅流再開となった。引き続き午前9時30分に左肺葉移植が開始され午前10時30分に左肺潅流再開となった。術後経過は良好で第21病日に自宅退院となり現在外来通院中である。【結語】本保存法は今後の肺移植数の増加、術後成績の向上に寄与する可能性があると考え報告した。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s295_1-s295_1, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ