薬剤探索の新たな戦略:NMR 独自の視点の活用

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  • Distinct NMR Views Leverage New Strategies in Drug Discovery
  • ヤクザイ タンサク ノ アラタ ナ センリャク : NMR ドクジ ノ シテン ノ カツヨウ

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抄録

本稿では近年みられる薬剤の探索戦略の変遷と、その中で見られる核磁気共鳴法(NMR)の役割について概説する。1957年のタンパク質分子の立体構造の報告から、Structure-Based Drug Discovery (SBDD) という戦略が生まれた。タンパク質の立体構造を基に「活性部位をピンポイントで狙う」薬剤分子を人工的にデザインするという発想である。しかしSBDD薬剤には、副作用や細胞馴化の問題が生じている。そこでアロステリック薬剤という新発想が生まれた。「タンパク質分子全体のダイナミクスを変化させることで、活性を任意に変化させる」薬剤分子のデザインという発想であり、従来の「活性部位をオフにする」発想とは異なる。ガン細胞の馴化への対策などに有望だと考えられている。また、Protein-Protein Interaction (PPI) 阻害薬という新戦略も生まれた。多くのPPIが病気に関連していることが知られていることから、SBDDと機械学習が組み合わされ、特定のタンパク質間相互作用を阻害する分子を探索するものである。NMRは構造決定だけでなく生体高分子の運動性も理解できる手法であり、アロステリック分子やPPI阻害薬の探索に有用な情報を与える。NMR には様々な手法があり、本稿でいくつかの適用例を示す。この解説を通じてお伝えしたいのは、創薬戦略がタンパク質分子の「機能に関わる残基」だけでなく「全ての残基を含めた分子全体のダイナミクス」に影響を与える薬剤分子の探索に移りつつあり、技術的にだけでなくその新戦略のコンセプトにNMRという手法が適しているということである。

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