障害児の養育家庭におけるエンターテインメントを通じた自主トレーニングが療育ストレスへ与える影響

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抄録

<p>【はじめに】</p> <p>障害児の主たる養育者、特に母親のストレスレベルが高いことは多くの研究で報告されている。筆頭演者 (以下演者)は神経筋疾患をもつ児の母親であり、生活の中でも特に自宅での自主トレーニング (以下自主トレ)にストレスを感じていた。今回はデジタルアート・センサーを活用した「デジリハ 」の利用をきっかけに、自主トレにおけるエンターテインメントの重要性を認識するに至ったため、当事者の視点から考察を行う。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p>演者は次女 (13歳、福山型筋ジストロフィー)を養育する4人家族の母。次女は特別支援学校及び放課後等デイサービスに週5で通い、拘縮や変形予防のために訪問リハビリテーションや音楽療法 (各月2回)を受けつつ、幼少期より各施設の専門職より指導された手指や下肢のストレッチの自主トレを実施してきた。実施中の次女は「ヤダ」「痛い」等のネガティブな表出を示すことが多く、保護者である演者も非常にストレスであった (10段階で記録した自覚的ストレス度は 7̃8/10)。また、次女は疾患の特性上次女自身出来ないことが増えていることを自覚している様子で、様々な活動に対しイラつく様子が見られていた。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 11歳時に自宅にて初めてデジリハを利用した際、普段と違い次女本人から「やりたい」という発言がよく聞かれた。表情にも 活気が見られ前向きな反応であった。拘縮のためセンサー操作が出来ない場面もあったが、手の角度や位置を試行錯誤しながら取り組む様子に、母である演者は「本人がやりたくないことを無理やり行わせる罪悪感」を抱かずに済んだと感じた。また、次女は普段様々な活動に対し消極的なことが多かったので、自身の身体機能と向き合って試行錯誤する姿に胸を打たれた。 それ以降、自主トレにおいて、次女本人が身体を動かしたくな るエンターテインメント性をもった絵具遊びや、ペンシルを活用したタブレット操作等の活動やアプローチを積極的に取り入れるようにした。結果、次女が自ら主体的に「やりたい」と活動に向き合ってくれるため、無理なく苦手な手指の動き等を引き出す機会を増やすことが出来た。また、「デジリハしやすくなるようにストレッチしようね」という形で説明すると、苦手なストレッチについても了承が得られ、嫌がらずに実施できた。これにより、保護者としての演者自身の養育ストレスも軽減が見られた (自覚的ストレス度2)。 </p> <p>【考察】</p> <p> ペアレント・トレーニングの重要性は多く示されているが、次女のような重複障害をもつ児に対しての自主トレ方法についても、多様なアプローチが示されるべきと考える。ストレッチや筋力強化など機能に直接アプローチする方法も重要だが、間接的であっても本人が主体的に継続できるエンターテインメント性の高い活動を取り入れることが、家庭での継続においては最重要な要素の1つであろう。今回は、デジリハを導入したことをきっかけに保護者である著者の自覚的な療育ストレスの低下が見られたが、そのようなアプローチが自主トレにおける家族の療育ストレス解消や、親子間の信頼関係にまで影響を与える可能性がある。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本発表において、当事者間で同意を相互に得て、実施した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 106-106, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817188352
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_106
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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