発達性協調運動障害を呈し短縄跳び技能低下した症例の経験

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抄録

<p>【はじめに】</p> <p>発達性協調運動障害(以下、DCD)児にみられる運動機能の緩慢さや不正確さ、不器用さは日常生活や学業成績に影響を与えるとされる。本症例は、対象児家族から「短縄跳び 」に関して相談があり、介入開始となった。相談から初診(X日 )までの期間で短縄跳びが獲得できていたが3ヶ月後には短縄跳びの技能低下が観察された。今回は、発達性協調運動障害を呈し、短縄跳びの技能低下を示した症例の経験を報告する。 </p> <p>【症例報告】</p> <p>初診時、普通級へ就学中の7歳男児、自閉症・発達性協調運動障害。既往歴に川崎病・冠動脈瘤があり、4歳頃には運動制限があった。現在、理学療法・作業療法介入し、頻度は1回/週。協調運動障害評価目録とJapanese Sensory Inventory Revised(以下、JSI-R)使用して評価した。身体機能は、腹部低緊張で下肢の柔軟性が低く、両足関節背屈制限(右<左) があり内反足傾向。筋力は腹筋・背筋ともにMMT2~3。四つ這い位やバードドック等の姿勢保持は困難。上下肢の位置覚や手の巧緻性、運動企画、前庭覚を中心に低下がみられた。 JSI-Rの結果では前庭感覚はYellow、ほかの項目はGreenであった。 </p> <p>【経過】</p> <p>X日の短縄跳びの観察では、縄回しは両肩関節軽度外転位(右>左)・肘関節は軽度屈曲が出現。縄回しの速度に左右差があり左上肢優位に動作する。跳躍は、両脚で踏切、前足部で着地して膝を屈曲させリズムをとっている。開始位置からのズレも少なく、連続試行回数は最大で8回。介入は、ストレッ チ、筋力増強運動、バランス練習を中心に評価と並行して実施。 X+3ヶ月の観察では、縄回しと跳躍の技能低下がみられた。 回数を重ねると縄回しの速度も徐々に加速し、連続動作が困難 となった。練習中、連続でできないことが嫌になり途中でやめてしまうことがあった。対象児自身は短縄跳びへの意欲は低く、短縄跳びの練習もX日以降、自宅や病院含めてあまり行えてい なかった。 </p> <p>【考察】</p> <p>DCD児の運動スキル獲得には、定型発達児よりも時間を要することが報告されている。短縄跳びのような運動スキルの学習は、手続き記憶に分類され獲得した動作は失われにくいと考えられている。本症例は、DCD児の運動スキルの獲得の特性から短縄跳びの獲得には時間を要することが推測された。また、X日での段階では「短縄跳びの動作をなんとなく掴めた」という状態であったと推察する。運動スキルの習熟度は高くなく、身体の運動要素を調整でき始めた学習の初期状態で手続き記憶として保存されていなかったことが考えられる。加えて、短縄跳びへの意欲も低いため練習に対してモチベーションも保てていなかった可能性がある。今回の介入は、短縄跳び動作を獲得できていたと考えていたためフォローが不十分であった。さらに、対象児自身の短縄跳びへの意欲も低く、動作練習に対する動機付けも不十分であったと考える。今後の介入は、「縄回し」・「跳躍」それぞれの運動要素を段階的に練習し「短縄跳び」の反復練習により動作の再獲得を目標とする。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本報告は当院の規定に基づき、個人を特定できないよう配慮し、研究以外の目的で患者データを利用しないこととした。また、症例の家族に対して本報告の趣旨を伝え、書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 115-115, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817193344
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_115
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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