痙直型脳性麻痺児の座位から立位動作時における運動学的特性に関する文献レビュー

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 痙直型脳性麻痺児(CP児)を対象とした研究では歩行に関する文献は数多くみられるが、座位から立位動作(STS:sit to stand)に関する研究は多くない。しかし、STSは移乗動作などで日常生活の多くの場面で必要な重要な動作である。したがって、 STSの自立の有無、介助量の程度は介護者の負担を大きく変える要素の一つとなる。本研究は、現在までに研究されてきたCP児の STSの運動学的特性と、今後の研究課題を明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> PubMedを論文データベースとして用い、「cerebral palsy」 and「stand」and「sit」の検索式にて検索を行った。得られた 結果から、検索結果の重複があるものを除外した。「動作の分類(patternizing)」、「運動学的特性(kinematics and kinetics)」について述べているものを抽出し、研究の目的に直接的に関係しない文献を除外した。抽出した文献の記述内容のみを客観的に把握するため精読した内容を検討した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 方法に記載した検索式で文献検索を行った結果、121件が該当した。その中からSTS動作について述べている文献は43件であった。得られた文献を分類すると、運動の特徴、装具やテーピングを用いた文献、椅子の高さなどの環境設定の文献、理学療法やトレーニングの介入を行っている文献、バランスや姿勢制御に関する文献、STS動作の能力からの予後予測に関する文献に分類できた。方法に記述した方法にて分析対象として得られた文献は、運動の特徴について述べている文献7件のうち5件であった。そのなかで今回の研究目的と合致するのが、STSの動作のパターン化を行っている文献が1件あり、同一著者による先行研究も精読した。該当の文献と先行研究の2つの共通点としては、STSの動作を座位から離床と離床から立位の2段階に分けていること、観察された動作からCP児のSTS動作の特徴を分類していることであった。CP児のSTS動作の特徴として、体幹を前傾するグループと前傾しないグループの2つに分類していた。また、STS動作時の運動学的特徴について述べている文献が4件該当し、多くの文献で、定型発達児(TD児)と比較して STS動作の遂行時間の延長、CP児のSTS動作中の股関節屈曲増大、最大骨盤角度の増大、膝伸展モーメントの減少、動作遂行時間の延長が挙げられた。 </p> <p>【考察】</p> <p> CP児のSTS動作の特徴として、股関節屈曲や体幹前傾などが挙げられることから、これらで動作の代償を行っていると考えられる。また、代償動作によって動作の効率低下が考えられるため、動作時間の延長の要因の一つと考える。さらに、両麻痺CP児の特徴として膝関節の急な伸展が挙げられていたことから、動作時の筋活動をさらに研究する必要がある。 CP児のSTS動作に関する研究は少なく、分野が多岐に渡っていた。さらに、CP児の運動学的特徴は歩行に関して多いものの、 STS動作そのものについての文献は、あまり見られなかった。 また、文献ではCP児のSTS動作のTD児との違いについて先行文献をもとに推測していたが、筋電図などを使用していないため、運動学的特徴に加えて筋活動も明らかにすることで、今後のリハビリテーションの知見になり得ると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>人を対象とした研究ではないため倫理的配慮が生じないが、著作権、盗用、剽窃などの倫理問題 (出版・公表に関する倫理)は生じるため、その点に関して配慮して文献をまとめた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 119-119, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817195008
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_119
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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