生活支援に的を絞った学童期の脳性麻痺児の単独リハビリ入所を経験して

DOI
  • 杉本 恵
    岐阜県立希望が丘こども医療福祉センター リハビリテーション課 理学療法係
  • 村澤 穂南
    岐阜県立希望が丘こども医療福祉センター リハビリテーション課 作業療法係
  • 岩佐 一彦
    岐阜県立希望が丘こども医療福祉センター 整形外科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 小児リハビリテーションにはICFの考え方が求められるが、外来リハビリにおいて日常生活動作 (ADL)の状況は、保護者からの聞き取りが多く実際の生活の流れの中で指導や練習は行えて いない。今回学童期の脳性麻痺児の単独リハビリ入所を経験し、 ADL向上とGMFMの変化が認められ、それが児の自信と、家族の児に対する接し方の変化に繋がったため報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 症例はGMFCSレベルⅢ、MACSレベルⅢ、EDACSレベルⅡ、 CFCSレベルⅠのPVLによる痙直型両側性脳性麻痺児の7歳男児。肢体不自由特別支援学級に所属する小学2年生。両親と兄弟と の5人暮らし。他施設にて4歳1か月で両股関節周囲筋 (腸腰筋、内転筋、大腿直筋)の解離術、内側ハムストリングス延長術、 両腓腹筋にボツリヌス療法施行。術後10週間の親子リハビリ入院と5歳後半で10週間の単独リハビリ入院を同施設にて経験。移動能力はFMSでC/1/1。今回7週間の単独リハビリ入所前に、 COPMを用いて母親と本人、OT、PT間で話し合い、食事、更衣、トイレの移乗動作及びAFO装用下での日常的なセブンクラッチ (SC)歩行を生活支援として取り組むこととし、GASにて 詳細に目標設定を行った。入所前後にてGMFM、WeeFIM、 ROMtest、MMT、MAS、10m歩行テスト、SC歩行距離の評価を行った。 </p> <p>【結果及び経過】</p> <p> 児は入所中、平日は隣接する特別支援学校に通った。PTは週5日2~6単位/日、OTは週2日2~3単位/日実施。PT/OTでは、主に目標のADLを環境設定と動作指導をした上で生活の流れの中で繰り返し実践した。その内容は病棟生活と学校生活に可能な範囲で取り入れられた。介助は最小限、見守りや適宜口頭指 示のみ。週末は自宅に外泊し、成果を家族に確認してもらった。 3週間後、母親からは「箸を使って食べるようになった」等の 感想があり、児からも前向きな発言が増えた。退所時評価では GMFMの点数は四つ這いと膝立ち領域で3点、立位領域で10点、歩行領域で4点上がった。WeeFIMは食事、更衣 (下)、トイレ動作、移乗動作の項目で計7点上がり合計98点となった。 ROMtestは肩関節の屈曲150°/140°→180°/170°に改善。 MMTは股関節屈曲、膝関節伸展で2→3と向上。MASは股関節外転と膝関節伸展2/2、足関節背屈3/2以外は0/0となった。 10 m歩行は歩数57歩→34歩、所要時間1分52秒→30秒。SC歩行は日常的に20m→120m安定して可能。COPMは遂行・満足スコアとも4.75→7。GASのT値は更衣動作、移乗動作、歩行の項目で50,重みづけが大きい食事動作で54.8。 </p> <p>【考察】</p> <p> ICFの考えのもとリハビリ単独入所の目的を、児の環境因子としての保護者が本児のADLに対して獲得を希望し、かつ本児が活動・参加で自主性を発揮できるものとした。家庭生活の流れでは取り組み難いが、適切な環境と指導の下、繰り返し実践す る場を7週間提供することで、比較的短期間でADLが向上した。目的動作を通して本児は自身の体の動きや姿勢の取り方に意識を向け、繰り返すことで学習した。結果姿勢コントロールが向上したことで過緊張が軽減しROMや筋力、GMFM及び歩行能力の向上につながったと考える。それは児の自信につながり、保護者の過介助を見直すきっかけとなった。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、岐阜県立希望が丘こども医療福祉センターの倫理審査委員会にて承認を得た。また、対象者と保護者には口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 128-128, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817199104
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_128
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ