成人の痙直型両側性脳性麻痺に対する手足の画像を用いた心的回転課題による運動イメージの特徴について

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 脳性麻痺は知覚・認知の障害を持つことが定義の中に加えられ,近年の脳性麻痺の研究では運動イメージ障害の特徴が報告され ている.脳性麻痺の運動イメージ研究は心的回転 (Mental Rotation : MR)課題を用いた片麻痺脳性麻痺児を対象とする研究が散見されるが,両側性麻痺を対象とした研究や二次障がいのある成人期を対象とした研究はない.そこで本研究では脳性麻痺に対する理学療法介入の一助とするために,麻痺の影響を取り除く選択課題を用いた上で成人の痙直型両側性脳性麻痺の運動イメージ特徴について検討した. </p> <p>【方法】</p> <p> 対象者は運動イメージ介入の経験が無い成人期痙直型両側性脳性麻痺者 (以下CP群)18名 (平均年齢:50.6±9.7歳)と健常者22名 (平均年齢:41.1±11.9歳)とし, PCを用いてMR課題と選択課題を実施した.MR課題では左右の手足の画像を用い,指先 が上を向いた状態から母指方向に90°ずつ回転させた4つの角度の画像を提示した.また選択課題には右左の漢字を用いた.反応時間 (Reaction Time : RT)とエラー率を算出し,さらに選択課題RTをMR課題RTから減算し,純RTを算出した.純RTとエラー率に関し,疾患の有無,手足,表裏 (手背が表)のそれぞれ2水準,角度4水準で4要因の線形混合モデルを分析し,手足と利き手2水準を入れ替えた4要因の線形混合モデルも分析した.交互作用が認められた場合は下位検定を行い,下位検定には Holm法の多重比較を用いた. </p> <p>【結果】</p> <p> RTは両群間で有意な差は認められなかった.CP群では手掌よ り手背が早い,手背では180°より0°,270°が早い,0°では裏より表が早い,0°と90°では非利き手より利き手が早いという結果であった.エラー率は手足ともに全ての角度で有意に CP群が高かった.また手足ともに表より裏が高い,手掌より足 底が高い,180°を除く3つの角度で裏より表が早い,180°が最もエラー率が高いという結果だった.さらに利き手のみ表より 裏が高く,表裏どちらでも利き手と非利き手に有意な差は認められなかった.</p> <p>【考察】</p> <p> 両麻痺児を対象とした先行研究ではRTの遅延とエラー率の増加が報告されている.本研究では,CP群は運動イメージ想起が可能でRTは健常者と差はないものの,エラー率はCP群の方が有意に高かった. CP群の運動イメージ想起能力の低下が考えられるものの,小児期から成人期にかけて緩やかに運動イメージが発達している可能性が考えられる.また脳性麻痺群では利き手の手背における運動イメージ想起能力が高く,非利き手,足に関しては運動イメージ想起能力が低いという結果であった.可動域や手足の視認経験,使用頻度がMR課題における運動イメージ想起能力と関連があるという先行研究の結果を支持する結果となった.以上から,発達的な視点で考察すると,運動イメージと運動機能の向上のためには,理学療法実施前,実施中に運動イメージの想起を随所に入れ,また手足など身体活動に対して,視認経験を増やすことが効果的であると考えている. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は北海道文教大学研究倫理審査委員会よる審査,承認を得て実施した (北海道文教大学承認番号:第 03021号). 対象者には,書面および口頭で研究の目的と方法,プライバシー保護に関して十分な説明を行い,書面にて同意を得て実施した.身体の障害により承諾の記載が困難な場合は代筆にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 135-135, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817202432
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_135
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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