機能的電気刺激を併用した立ち上がり練習の即時効果 -脳性麻痺患者の運動単位発火頻度による検討-

DOI
  • 安部 千秋
    社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター リハビリテーション部 社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター 先進リハビリテーション推進室 北海道文教大学 リハビリテーション科学研究科
  • 髙橋 良輔
    社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター リハビリテーション部 社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター 先進リハビリテーション推進室
  • 阿部 正之
    社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター リハビリテーション部 社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター 先進リハビリテーション推進室
  • 白坂 智英
    社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター 診療部

抄録

<p>【はじめに, 目的】</p> <p> 立ち上がり動作が困難な脳性麻痺 (以下 CP)者の理学療法において, 課題指向型アプローチに基づいた 反復した動作練習を行うことは多い. CP者の立ち上がりが困難な理由の1つに筋力低下が挙げられ, 粗大運動能力分類システム (以下GMFCS)が低い群ほど筋力が低値であるとされている.筋張力を構成する因子として, 運動単位のFR (以下FR), 動員数,動員されるタイミングが関連し, 先行研究ではCP者の随意運動における運動単位のFRが健常者より低値であることが報告されている. 健常者ではFRを向上させるツールの1つとして神経筋電気刺激が有効であるとされるが, CPでは運動単位の動員に関する報告はされていない. 今回, 立ち上がり動作の介助量軽減を目標とするCP者への立ち上がり動作への機能的電気刺激 (FES)の効果検証を目的として,即時的に立ち上がり動作時の筋活動および運動単位のFRの変化を評価したため報告する. </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p>対象はGMFCSレベルⅣの痙直型四肢麻痺を呈する30歳代男性である. 立ち上がり練習中に使用する FESは, 神経筋電気刺激装置NM-F1 (伊藤超短波社製)を用いて,右側の大腿四頭筋に電極を貼付した。刺激強度は, 完全強縮が誘発される強度 (刺激強度25-28mA, 周波数50Hz, パルス幅300 μs)にてOn:Off時間を7秒:5秒に設定し, 電気刺激に合わせて前方のテーブルを使用した立ち上がり動作を実施した. 介入及び評価は, 介入前評価 (A)後, 電気刺激を使用しない立ち上がり練習を30回実施した後に再評価 (B)を実施, 最後に電気刺激を併用した立ち上がり練習を30回実施した後に最終評価 (C)を実施した. 30回の動作練習は10回毎に休息を行った. すべての評価は5回のFESなしの立ち上がり動作を評価した. 筋電図評価はDelsys社製表面筋電計のGalileoセンサーを使用し,サンプリングは2000Hz (Band-pass: 20-450Hz)とした. 運動単 位の分析はDecomposition法により推定し,表面筋電図は両側の大腿直筋から記録した. 筋電図からは筋活動量 (立ち上がり動作中の実行値 (RMS)の最大値)と最大FR, 平均FRを算出し, 5回の動作の平均値を左右ぞれぞれで求めた. </p> <p>【結果および経過】</p> <p> RMS〔左/右μV〕はA:36. 6/24. 9, B :34. 9/25. 9, C:38. 1/35. 3, 最大FR〔左/右pps〕はA: 12. 5/14. 9, B:15. 4/13. 9, C:15. 6/17. 4, 平均FR〔左/ 右pps〕はA:10. 4/10. 3, B:10. 1/ 8. 4, C:11. 4/13. 0であった. 立ち上がり動作はA, Bで座位時の膝関節屈曲角度を維持した状態で離殿したが, CではA, Bよりわずかに離殿時の下腿前傾と膝関節屈曲及び離殿後の膝関節伸展運動が見られた. </p> <p>【考察】</p> <p>A-B間でRMSは±5%以内の変化であったが, B-C間で左9%, 右が36%増加し, 最大FRでは特に右下肢が25%の増加と平均FRはA‒B間で左は維持, 右で低下したが, Cでは左右共に最も高値であった. これより電気刺激を併用した立ち上がり練習は下肢の運動単位のFRが改善し, 活動が動員されやすくなり,運動学習にも寄与したと考える. 本症例は電気刺激を併用した介入の継続を希望した. 2ヶ月程度の使用により上肢の代償が軽減し, 家族は介助量軽減を実感したケースである. 電気刺激の併用は, 通常の介入に更なる価値をもたらす可能性がある. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>今回の介入,評価にあたってはヘルシンキ宣言に基づき,対象者および保護者に対して目的と方法,協力の任意性,撤回の自由と個人情報に関する説明を実施し,両者から書面にて同意を得ている.</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 138-138, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817203968
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_138
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ