選択的脊髄後根切断術後に一期的多部位手術を行った脳性麻痺児の移動機能の変化

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 選択的脊髄後根切断術 (selective dorsal rhizotomy:以下 SDR)と整形外科的な一期的多部位手術 (single-event multilevel surgery:以下SEMLS)を短期間に行う症例の報告は少ない。今回、SDR施行半年後にSEMLSを行った症例の術後 理学療法を行い、短期的に移動機能が改善したため、報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 症例は脳性麻痺の痙直型両側性麻痺 (GMFCSレベルⅡ)、 MACSレベルⅡ、CFCSレベルⅡの男児。1歳時から他施設で理学療法を受け、2歳2か月で独歩獲得。尖足歩行あり、ボツリヌス治療を行っていた。5歳2か月当院初診時、独歩可能だが裸足では踵接地なく、立位は常に尖足位で静的立位保持は10秒未満であった。術前、SDR術後9か月(SEMLS後3か月)でMTS、 ROM、 GMFM、PEDI (移動)、COPM、EVGSを評価した。術前のMTS ・ROMで内転筋・ハムストリングス・下腿三頭筋の痙縮と足 関節拘縮を認め、DKE (右/左)-20°/-10°であった。COPMは母が改善を期待する作業項目を評価、重要度の高い順に「長距離歩行(1km)獲得、転倒回数減少、トイレでの開脚座位安定、カ ートの乗り降りの易化」であった。5歳4か月でSDR、5歳11か月で選択的筋解離術 (内転筋、大腰筋、大腿直筋、内側ハムストリングス)、Vulpius法施行。SDR後2か月間、SEMLS後1か月間入院し、理学療法を行った。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> SDR後はアライメント矯正のためHKAFOを使用した立位・歩行練習を行った。また、痙縮筋の拮抗筋の活動を促すため、後ろ歩き練習を行った。術後50日で独歩再獲得、術後3か月時点で ICは前足部接地であった。SEMLS後は体幹・下肢の筋の協調を促すために下腿前傾を強調した起立練習を行った。日常生活に筋力強化の機会を組み込めるよう、退院前に家族と方法を検討した。MTSはSDR後にslow-fast stretchの差が減少し、 ROMは SEMLS後にDKE (右/左)10°/15°となった。SDR術前→術後9か月でGMFM-66B&Cスコアは65.3→68.3、PEDI尺度化スコアは66.2→75.2、COPMの平均遂行/満足度は 4.25/4.75→ 7.25/7.5となった。COPMの満足度は長距離歩行獲得が2点減点、その他は2点以上改善した。歩行はEVGSが 46→13点となり、踵接地や立脚期の膝伸展、遊脚期の足関節背屈の項目が2 →0もしくは1へ改善した。静的立位保持は1分以上可能となった。 </p> <p>【考察】</p> <p> SDRとSEMLSにより痙縮と関節可動域が改善し、それぞれの状況に即した練習を行い、かつ日常生活に汎化されるよう家族指導したことで、歩行パターン改善と短期間での日常的な移動スキル向上に繋がったと考える。PEDIは屋内の移動速度・物品輸送の項目が改善し、COPMの転倒回数減少の満足度の改善と合わせ、歩行安定性の向上を示していると考える。一方で長距離歩行の満足度が低下しており、今後は歩行耐久性も評価していく。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>対象児の保護者に、症例報告の趣旨と個人情報の保護について十分に説明し、書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 153-153, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817211392
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_153
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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