歩行可能な脳性麻痺児に対する下肢筋腱解離術後の関節可動域,粗大運動能力の経年変化

DOI
  • 川原田 里美
    青森県立あすなろ療育福祉センター 診療部医療科
  • 横山 恵里
    青森県立あすなろ療育福祉センター 診療部医療科
  • 下山 論史
    青森県立あすなろ療育福祉センター 診療部医療科
  • 福士 千尋
    青森県立あすなろ療育福祉センター 診療部医療科
  • 上里 涼子
    青森県立あすなろ療育福祉センター 診療部医療科
  • 吉川 圭
    青森県立あすなろ療育福祉センター 診療部医療科

抄録

<p>【目的】</p> <p> 歩行可能な脳性麻痺児 (以下,CP児)に対する下肢筋腱解離術は下肢関節可動域 (以下,下肢ROM)や粗大運動能力の維持・改善を目的として行われる.CP児の下肢筋腱解離術後の運動機能の変化に関する報告は,術後1年までの粗大運動能力や歩行能力,下肢ROMの改善を示しているものが多いが,その後の経年変 化を調べているものは少ない.術後,運動機能が改善し維持される期間を知ることができれば,術後の介入やフォローアップを適切に行うことが可能となる. 本研究の目的は,CP児に対する下肢筋腱解離術後の下肢ROM,粗大運動能力の経年変化を調査することである. </p> <p>【方法】</p> <p> 対象の選択基準は当センターで2006年4月1日~2017年3月31日の期間に下肢筋腱解離術を受けた手術時年齢18歳以下の痙直型 CP児.粗大運動能力の重症度分類 (Gross Motor Function Classification System,以下GMFCS)レベルI~IIに分類される歩行可能なCP児で術前および術後5年以上継続的に理学療法評価を受けている児とした. 診療記録から手術時年齢,性別,麻痺型,術式 (手術介入した筋腱)を調査し,術前から術後5年まで1年ごとの理学療法評価結果から以下のデータを収集した. (1)トーマス肢位での股関節伸展ROM (以下,股伸展), (2)膝窩角, (3)膝関節伸展位での足関節背屈ROM (以下,足背屈).下肢ROMは麻痺がつよい側の測定値とした. 粗大運動能力尺度 (Gross Motor Function Measure, 以下GMFM)の (4) 立位領域, (5) 歩行・走行・ジャ ンプの領域. (1) ~ (5) の評価データについて,術前および術後1~5年の6時点の経年変化の統計解析はFriedman検定を行い,有意差が認められた場合,術前と術後1年,術後1年と術後2~ 5年を比較するためにWilcoxonの符号付順位検定を行った.統計ソフトはR ver.4.0.3を使用し,有意水準は 5%とした. </p> <p>【結果】</p> <p> 選択基準に該当したCP児は20名 (男児11名女児9名),GMFCSレベルはIが18名,IIが2名,手術時年齢は平均7.3±3.0 (3~ 12)歳,麻痺型は両麻痺15名,片麻痺5名.手術は症例ごとに異なるが,腓腹筋は全例,ハムストリングスは19名で延長,解離等を受けていた.すべての評価データはFriedman検定で有意差が認められた.術前と術後1年,術後1年と術後2~5年の検討では,股伸展は術後1年で改善しその後は維持,膝窩角は術後1年で改善していたが術後2年以降は低下していた.足背屈は術後1年で改善し術後2年まで維持していたが術後3年以降は低 下していた.GMFMの立位領域は術後1年で改善し,術後3,4, 5年でさらに改善がみられた.歩行・走行・ジャンプの領域は 術後1年で改善し,術後5年まで改善が続いた. </p> <p>【考察】</p> <p> GMFMは術後5年まで改善していた一方で,膝窩角は術後2年,足背屈は術後3年で術後1年の改善を維持していなかった.その要因として,CP児の歩行では遊脚期の膝関節屈曲,伸展,足背屈,蹴り出し時の膝屈曲,足底屈が少なく,ハムストリングスや腓腹筋の筋力を発揮できないことが推察される.また,下肢 ROMの術後の経年的な低下は術後5年までのGMFMスコアには反映されず,歩行の質的変化や高度な運動能力を捉える評価を加え,より長期の経過を追跡する必要がある. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は青森県立あすなろ療育福祉センター倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2022-15).</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 155-155, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817213056
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_155
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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