重症心身障がい児の側弯症手術により生じた腰椎の矯正と術後に生じたシーティングの傾向に関する調査

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Abstract

<p>【はじめに】</p> <p> 当院では2020年9月より信州大学医学部附属病院と連携し、重症心身障がい児における側弯症手術の手術前の包括的評価、および手術後管理をチームで行っている。理学療法士は、術前の評価と術後の呼吸理学療法や離床、在宅移行のための移乗・移動等の見直しを行っている。今回、側弯症手術後に生じたシーティングの問題に着目し、傾向を調査した。 </p> <p>【方法】</p> <p> 本調査は、2020年9月から2023年6月までに、重症心身障がい児に対して、後方矯正固定術を施行した症例を対象とした後方視的調査である。①術前の股関節屈曲角度、②Cobb角の矯正率 (側弯矯正率)、③術前後の腰椎前弯角 (T12-S1前弯角)の変化と、手術後に実施したシーティング調整との関係についてそれぞれ調査した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 対象は重症心身障がい児の13例。患者背景は全例GMFCSⅤレベル、手術時年齢平均14±3.6歳 (8~22歳)、手術固定範囲8~ 15椎間 (上端Th2~9・下端L4~5)、術前股関節屈曲角度平均 92.1±25.3° (35~130°)、うち90°以下が8例 (35~90°)、 術前Cobb角平均123.2±20.9° (84.4~156.0°)、術後Cobb角平均74.1±22.4° (41.2~125.8°)、側弯矯正率平均40.1± 13.9% (7.5~56.6%)、腰椎前弯の角度変化平均14.6±48.6° (-41.5~114.7°)であった。術後に座角調整を必要としたのは5 例であった。 側弯矯正率と術後のシーティング調整との関係は明らかではなかったが、全例が脊椎固定により座位姿勢における前額面での側屈方向への姿勢の崩れが軽減し、頭部位置の変化が生じた。術後に座角調整を必要とした5例は、全例が術前股関節屈曲角度90°以下、かつ腰椎前弯角が術後に増強していた。腰椎前弯が減少した6例は座角調整を必要としなかった。また、術前に腰椎が後弯していた3例のうち、2例は股関節屈曲角度が65°以下であった。この2例は、術前後で座角拡大の調整を含むシーティングの大幅な変更が必要であり、術前よりもリクライニング角度を起こすことが困難であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回の調査結果から、術前股関節屈曲角度90°未満の児は、本手術で腰椎前弯方向への矯正と固定による体幹矢状面でのアライメントの変化が生じる場合、腰椎前弯を増強する矯正により骨盤前傾の変化が生じ、相対的に股関節の屈曲角度へ影響し、それまで使用していたバギーの座角の調整が必要となったと考える。また、股関節屈曲制限が著明で腰椎後弯位で代償して座位を保持している児の場合には、座角調整に伴いリクライニングのギャッチアップ角度に制限が生じ、術前同様の座位が困難となり、QOLが低下する可能性があることが示唆された。本手術は、呼吸機能の改善のため胸椎を後弯位に矯正する際に、相対的に腰椎を前弯矯正することが基本となるが、腰椎の前弯矯正の程度は股関節屈曲制限の有無も考慮してもらう必要があることが示唆され、腰椎前弯矯正をどの程度行うかは座位能力の維持という観点も考慮して検討する必要があると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本調査は、長野県立こども病院 倫理委員会にて承認を受けた。</p>

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