当法人における小児がん患者のリハビリテーションの現状と課題 ~利用者の特徴からの検討~

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 小児がんは小児期の重要な死因のひとつであり、年間500名程度が死亡している。しかし終末期に最後まで自宅で過ごすことができるケースは限られている (大隅2020)。当法人は在宅療養支援診療所、訪問看護ステーションを擁し、多くの小児がん患者の自宅療養を支援し、看取りまでを行っている。リハビリテーション (リハ)部門も小児がん患者に訪問し、リハを提供している。小児がん患者に対する訪問リハに関して、一定の指針や手順は示されておらず、当法人ではケースごとに悩みながら対応しているのが現状である。 そこで今回、当法人の小児がん患者の特徴を抽出し、リハの現状を把握するとともに今後の課題について検討することを目的として本研究を実施した。 </p> <p>【方法】</p> <p> 当法人の小児がん患者の特徴について、診療録より後方視的に 調査した。対象期間は2018年4月~2023年3月とした。調査項目は、性別、年齢、疾患分類 (脳腫瘍・固形腫瘍・造血器腫瘍)、初回リハ時の運動機能・コミュニケーション能力、訪問診療初診からリハ開始まで日数、訪問診療初診から永眠までの日数、看取り場所、リハ開始から永眠までの日数、リハ訪問回数、リハ終了から永眠までの日数とした。今回、小児がん患者のみではなく、AYA世代の患者も含むこととした。福祉用具貸与や調整のみで訪問した対象者は除外した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 対象者は26名 (男性12/女性14)であった。 初回リハ時の年齢の中央値は8歳 (2~19歳)。6歳未満が9名、 6歳~14 歳が13名、15歳以上が4名。 小児がんの疾患分類は脳腫瘍19名、固形腫瘍5名、造血器腫瘍 2名。 初回リハ時の運動機能は、屋外歩行可能8名、屋内歩行可能3名、座位保持可能8名、座位保持不可能7名であった。コミュニケーション能力は、会話可能14名、単語でやりとり7名、ジェスチャーでやりとり4名、コミュニケーション不可能1名であった。 訪問診療初診からリハ開始までの日数は中央値14.5日 (2~451 日)。 全例亡くなっており、訪問診療初診から永眠までの日数は中央値173日 (24~459日)。 看取り場所は自宅22名、病院4名。 リハ開始から永眠までの日数は中央値116日 (8~798日)。リハ訪問回数は中央値18.5回 (2回~52回)。 リハ終了から永眠までの日数は中央値3日 (0~224日)。そのうち0日が5名、1日が3名、2日が4名、3日が3名であった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 対象者の年齢は幼児、学齢、AYA世代まで幅広い。それぞれの発達状況や生活課題に対応する必要がある。疾患分類は脳腫瘍が多く、局所症状に注意しながらリハを進めていくことがもとめられる。リハ初回時の運動機能はさまざまであったが、コミュニケーションは比較的とりやすかった。対象者のニーズ、意思を尊重しながらリハを実施することが重要である。 初診からリハ開始までは約2週間程度であり、症状への対応に加えて自宅環境の調整も検討していく。リハ継続期間は約4か 月であり、対象者の急な状態変化に対応することが求められる。リハ終了から永眠まで、3日以内が半数以上を占めており、緊 急時対応や連絡体制を明確にする必要があると考えられた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>個人情報および診療情報などのプライバシーに関する情報は個人の人格尊重の理念の下、厳重に保護され慎重に取り扱われるべきものと認識し、個人情報の保護に関する法律、 ヘルシンキ宣言、 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従った。本研究はカルテ情報を用いた後ろ向き研究であり、被験者に直接的な利益は生じない。研究の際、個人を直ちに判別できる情報 (氏名、住所など)は利用しなかった。本研究の目的以外に、本研究で得られた情報を利用しない。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 162-162, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817218432
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_162
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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