低酸素脳症後の慢性期の女児に対して問題点の抽出にGMFMを使用した事例

DOI
  • 浅井 朋美
    神奈川県総合リハビリテーションセンター 理学療法科
  • 澤田 あい
    神奈川県総合リハビリテーションセンター 理学療法科
  • 吉橋 学
    神奈川県総合リハビリテーションセンター 小児科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 当院では、回復期だけでなく医師の判断により集中リハ目的に慢性期にあたる患児の受け入れを行っている。今回、二次性徴後から動きが鈍くなったとご家族から訴えがあった低酸素脳症児を担当し床から立ち上がり椅子に座る動作の獲得を目標とした。一般的な理学療法評価に加え脳性麻痺児に使用される粗大運動能力評価のGMFMを用いたところ問題点の抽出、介入方法の検討、ご家族との情報共有に有効であったため報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 本症例は先天性心疾患を認め5歳時に心内修復術実施後、意識障害が改善せず、低酸素虚血性脳症の診断となった12歳の女児である。約2か月間に渡る今回の集中リハ終了時点で目標動作の獲得までには至らなかったが、退院後約1年の時点で目標動作を獲得した。入院時の身体機能評価は、不全四肢麻痺、 ROMは両股関節伸展0度、MMTは両股関節伸展、足関節底屈2 、それ以外は3、筋緊張は四肢が高筋緊張で中枢部が低筋緊張、 協調運動障害やバランス障害があった。GMFMの達成度はA 86%、B85%、C43%、D23%、E8%で総合49%であった。目標動作の分析は、動作開始肢位の設定、立ち上がり動作、方向転換に中等度の介助を要し、GMFMのC項目37は1点であった。また、目標動作の構成要素はGMFMの得点から検討し、片膝立ちを経由する方法とした。GMFMでの膝立ちの項目は2 点、片膝立ちの項目は1点、立位の項目は1点であった。また、膝立ちは GMFMで2点だったが、理学療法評価の動作分析では股関節の伸展不足、体幹の不安定性、バランス不良な点から膝立ち姿勢は不十分であると判断した。以上のことより、目標動作獲得における問題点を、理学療法評価や動作分析に加えGMFMの結 果から抽出し、抗重力伸展活動の低下、上下肢の支持性の低下、バランス能力の低下、膝立ち、片膝立ち、立位保持困難とした。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 介入では、膝立ちや片膝立ち等のマット運動、ロボットスーツ HALを使用した起立着座練習、歩行器を使用した歩行練習や階段昇降練習を実施した。その結果、目標動作は動作開始時の片膝立ちが軽介助、それ以外は見守りで可能となりGMFMのC項目37は2点となり、動作分析では膝立ち姿勢は改善したと判断した。さらに、GMFMにおける点数の変化をご家族へ提示し、退院後も動作練習を継続できるように家族指導を行った。 </p> <p>【考察】</p> <p> 問題点の抽出に質的な理学療法評価と量的評価であるGMFMを併用したことで、点数と動作分析のギャップが明確となり、目標動作の練習だけでなく、姿勢改善や関連動作に対しても介入を行ったことが目標動作のGMFMの点数の向上に繋がったと考えた。さらに、GMFMから得られた結果から、目標動作の構成要素を症例に合わせて選択し、介助が必要な場面や今後の練習が必要な場面をより具体的にご家族と共有できたことが最終的な目標動作の獲得に至ったと考えた。以上のことから、GMFMは低酸素脳症児の運動能力の把握にも有効であり、また、理学療法評価と併用することで、問題点を抽出する手段や身体機能を家族と情報共有する手段としても有効であったと考える。</p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>発表に際してヘルシンキ宣言に基づき、患児とご家族へ書面と口頭にて十分な説明を行い同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 170-170, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817223168
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_170
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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