Ullrich型先天性筋ジストロフィーの病態改善を目指した細胞移植治療法の確立~移植用細胞源の検討~

DOI
  • 後藤 萌
    京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門 櫻井研究室
  • 竹中 菜々
    京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門 櫻井研究室
  • 吉岡 紀穂
    京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門 櫻井研究室
  • 三木 麻有甫
    京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門 櫻井研究室

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> Ullrich型先天性筋ジストロフィー(UCMD)は、生後間もなく筋力の低下を呈し、筋萎縮や近位関節の拘縮、遠位関節の過伸展などが特徴的な症状と見られる先天性筋ジストロフィーの1つであり、COL6A1、COL6A2、 COL6A3の遺伝子の変異によって正常なⅥ型コラーゲン (COL6)が産生されないことが原因で発症する。しかし、現在UCMDに対しては対症療法的治療が一 般的で、有効な根治治療法は未だに確立されていない。そこで、我々はCOL6を含めた様々な因子を分泌することで知られてい る間葉系間質細胞 (MSC)に着目し、UCMDに対する新規治療法の確立を目指し研究を進めてきた。当研究所では、多能性幹 (iPS)細胞からのMSC(iMSC)の作成に成功し、さらにそれらを UCMDモデルマウスの骨格筋へ移植することでUCMD筋組織中にCOL6が補充され、骨格筋再生不全の病態が改善されることを証明した (Takenaka-Ninagawa et al., 2021)。また、MSCは成体の様々な組織から収集可能であるが、その中でも骨髄由来 MSC (BM-MSC)や脂肪由来MSC(Ad-MSC)については既に臨床において様々な疾患の治療に使用されている。そこで、本 研究ではUCMDモデルマウスにBM-MSCと Ad-MSCを移植し、その際にもCOL6の補充がされiMSCと同等のUCMD病態改善効 果が発揮されるか否か、治療効果を比較検討し、UCMD治療の 為に最適な移植用細胞源を明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> オスUCMDモデルマウス (5週齢~8週齢)の左前脛骨筋 (TA)に BM-MSC、Ad-MSC、 iMSCをそれぞれ培養液中に懸濁して移植した。同時に対照実験として、右TAには培養液のみを注入した。移植1週間後と12週間後にそれぞれのTA筋組織を採取して凍結薄切切片を作製し、蛍光免疫染色及びシリウスレッド染色を実施して各群間で比較した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 移植後1週間では、総面積に占めるCOL6陽性面積の割合は、 BM-MSC移植群が他2群よりも有意に高かった。筋線維総数に 占めるCOL6陽性線維 (COL6に完全に囲まれた筋線維)の割合は、 iMSCとBM-MSCを移植した群が、Ad-MSC移植群よりも有意に 高かった。しかし、再生筋線維数の割合ではiMSC移植群が他2群と比較して有意に高かった。移植後12週間では、COL6陽性面積の割合は、iMSCとBM-MSCを移植した群でAd-MSC移植群よりも有意に高かった。COL6陽性線維数の割合は、BM-MSC 移植群では他の2群よりも有意に高かった。一方で、線維化領域を示すシリウスレッド陽性領域の割合についても、BM- MSC移植群で他の2群よりも有意に高かった。 </p> <p>【考察】</p> <p> BM-MSCとAd-MSCも、UCMD筋に移植された際、12週間生着することが確認できた。しかし、COL6の補充領域については、 BM-MSCとiMSC移植群の2群が同程度に大きく、筋再生不全の病態改善効果についてはiMSCが最も優れていた。加えて、 BM-MSC移植群では顕著な線維化領域の拡大が認められ安全性が懸念されることから、移植用細胞源として治療に使用することは難しい。以上の結果から、iMSCがUCMDに対する移植用細胞源として最も適していることが示唆される。今後は、UCMDに対するiMSC移植治療の臨床応用を目指し、移植対象筋の選 定や移植時期、具体的な移植方法を含めさらなる研究を進める。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は京都大学動物実験委員会の審査を受け実施した (承認番号:計23-196 計 23-197)。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 37-37, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817232000
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_37
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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