低出生体重児における発達遅延を予測する Dubowitz神経学的評価カットオフ値と乳児期の粗大運動発達の関係

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p>Dubowitz神経学的評価法は予定日付近における神経行動発達をよく反映しているとされ、児の全体像把握、理学療法介入のスクリーニングとして活用されている。低出生 体重児を対象とした本評価法の予後予測能は不十分とされているが、乳児期の粗大運動発達の経過との関係について詳細に検討した報告は稀である。本研究の目的は、Dubowitz神経学的評価法のカットオフ値を算出し、発達予後予測能および乳児期の粗大運動発達との関係について検討することである。 </p> <p>【方法】</p> <p>対象者は2012年1月1日から2020年12月31日までに当院にて出生し、医師より理学療法評価介入の依頼のあった児とし、脳性麻痺やダウン症など神経疾患および染色体異常の診断がある児、転居などを理由に当院の発達フォロー外来を終了した児は除外した。診療情報は、カルテ記録より全て後方視的に収集した。周産期情報および発達の経過として、出生体重、在胎日数、人工呼吸管理期間、酸素療法期間、予定日頃の Dubowitz新生児神経学的評価のトータルスコア、修正6ヶ月時および12ヶ月時のアルバータ乳幼児運動発達検査法 (以下、 AIMS)の下位項目およびトータルスコア、修正1歳6ヶ月時の新版K式発達検査法 (以下、新版K式)のDevelopmental Quotient (DQ)を収集した。神経学的予後として、修正1歳6ヶ月時の新版K式においてDQ85未満であった場合を発達遅延ありとして、発達遅延を予測するDubowitz新生児神経学的評価のカットオフ 値をReceiver Operating Characteristic (ROC)曲線にて算出した。また、算出されたカットオフ値により2群に分類し、出生体重、 在胎日数、人工呼吸器による管理期間、酸素療法期間、粗大運 動発達の経過として、修正6ヶ月時と修正12ヶ月時のAIMSについて、2群間で比較を行った。統計処理ソフトはR (ver. 4.2.1) を用いた。危険率は5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p>対象者は90名で在胎週数、出生体重は、中央値 (四分位範囲)で29.4 (26.9-31.1)週、1,104 (884-1,333)g、男女比は 45:45であった。ROC曲線によるDubowitz新生児神経学的評価のカットオフ値は31.5点、感度38.1%、特異度84.0%、陽性的中率38.2%、陰性的中率33.3%、AUCは0.59を示した。カット オフ値に満たない群では、在胎週数が有意に短く、人工呼吸管理期間が有意に長かった (p < 0.01)。修正6ヶ月時と修正12ヶ月時のAIMSでは、2群間で有意差は認めなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p>Dubowitz新生児神経学的評価による発達遅延の予後予測能は低く、すでに報告されているものと同様の結果であった。一方でカットオフ値によって2群に分類し、周産期情報を比較 すると未熟性と関連のある在胎週数、人工呼吸管理期間において有意差を示した。この結果から、Dubowitz新生児神経学的評価は予定日頃の児の成熟度を反映している可能性が示唆された。しかし、乳児期の粗大運動発達の経過には、2群間で差が見ら れなかった。したがって、Dubowitz新生児神経学的評価は乳児期の発達経過との関連性は低いことが予想されるため、予定日頃の児の成熟度評価として活用することが望ましいことが考えられた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を受け、観察研究として行った(承認番号332-153)。なお、拒否機会を設けた情報公開を行った。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 40-40, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817233920
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_40
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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