重症心身障害児(者)の横隔膜移動距離と姿勢との関連について

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 重症心身障害児(者)の特徴として、寝たきりの状態が多い、変形や拘縮を伴うことが多い、痰の吸引が必要であり、肺炎や気管支炎を起こしやすいとされている。また、重症心身障害児 (者)は骨格系の変形による胸郭変形や横隔膜の運動制限が生じやすく、呼吸機能の低下が示唆される。今回、横隔膜のみで呼吸を行った場合の肺活量は一般的に予想肺活量の70%であるといわれているため、重症心身障害児(者)の横隔膜に着目した。現在、行われている呼吸機能検査ではスパイロメータによる検査が定着しているが、重症心身障害児(者)では重度の知的障害のため、言語によるコミュニケーションを使用した検査は困難である。そのため、非侵襲的で身体の表面から内部を測定することができる超音波診断装置を使用し、横隔膜の移動距離を評価できないかと考え、研究を行った。今回の研究では重症心身障害児(者)の姿勢と横隔膜の動きの関係性を明らかにし、呼吸機能に対する影響を検討することを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象者は重症心身障害児(者)17名(男性10名女性7名、年齢21.7 ±11.2歳、身長1.33±0.19m、体重29.3±9.8kg)とし、測定肢位は背臥位、両側臥位、腹臥位とした。超音波診断装置 (VolusonE8)、コンベックス型プローブ3.5Hzを使用し、右肋骨弓下斜走査法を用いて計測した。先行研究に基づき、Bモードで肝臓、腎臓、胆嚢をランドマークに横隔膜位置を同定し、Mモードで安静呼気から最大吸気時の横隔膜移動距離を安静時呼吸5回分測定した。基礎情報として年齢、性別、身長、体重、心拍数、呼吸数、動脈酸素飽和度、脊柱変形角度 (cobb角、胸郭扁平率)を得た。統計処理としてデータの正規性の検定は Shapiro-wilk検定、各姿勢の横隔膜移動距離の変化はフリードマン検定、多重比較としてダービン=コノバー法を使用した。横隔膜移動距離と体格・胸郭形状・バイタルサインとの関連性の検討にSpearmanの相関分析、脊柱変形の特徴および脊柱変形の程度による横隔膜移動距離の差の検定にマンホイットニー のU検定を使用した。統計ソフトはSPSS version 22.0を用い、有意水準は5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 各姿勢の横隔膜移動距離の中央値は腹臥位 0.28cm、背臥位 0.79cm、右側臥位 0.64cm、左側臥位 0.57cmであり、腹臥位での横隔膜移動距離が有意に低値であった (p<0.05)。各姿勢での横隔膜移動距離と体格・胸郭形状・バイタルサインとの有意な 関連性は認められなかった。脊柱変形は胸部C字側弯が4名、 S字側弯が12名であった。S字側弯の中で胸部側弯50°未満が 6名と50°以上が6名であり、脊柱変形の特徴および脊柱変形 の程度の群間における横隔膜移動距離には有意な差は認められなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 重症心身障害児(者)は背臥位、左側臥位、右側臥位と比較して腹臥位での横隔膜移動距離が低下していた。これらは前胸部の圧迫によりポンプハンドル機能が働かず、他の姿勢と比較して腹臥位の横隔膜移動距離が低下したのではないかと考えた。各姿勢での横隔膜移動距離と体格・胸郭形状・バイタルサインに有意差がみられなかったことから重症心身障害児(者)の横隔膜動作には姿勢による影響が強いと考えた。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>国際医療福祉大学大学院倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:22-lg-196)</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 50-50, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817240192
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_50
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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