脳症後遺症を呈した症例ー高校卒業後の生活に向けた短下肢装具の選定ー

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抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 急性脳症後遺症は、筋緊張異常や知的障害により姿勢保持能力や移動能力に異常をきたす事がある。予後として、歩行獲得後も関節拘縮や筋力低下をきたし、歩行能力維持が課題となり運動療法と共に装具療法を行う。今回、高校卒業を控える脳症後遺症の症例を担当し、生活で必要となる装具の選定について以下に報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 症例は年齢10代、女性、特別支援学校に通学中。1歳4か月で発症、11歳で短下肢装具付靴型装具 (以下旧装具)を作成。旧装具は金属支柱付きで、足部補正が少ない装具である。足長の成長が少なく、靴部分を残し金属支柱のみ修理を行い使用。当院でのリハビリテーションは3年前より開始。初回、寝返り・起き 上がり・あぐら床座位自立。起立・立位保持・歩行は一人介助。両足部外反扁平変形、足関節背屈制限あり。左足関節背屈 -3°、右足関節背屈0°である。立位も、左足底全面接地困難。主に車いす生活で、場所により後方一人介助にて歩行。知的障 害より簡単な指示理解可能だが意思の訴えに困難さあり。当院でも旧装具を使用し起立・歩行練習を実施。学校での活動時間や、歩行練習の際も使用。しかし、内転筋群優位の歩容が目立ち、外反扁平変形の助長で外転筋群の筋出力低下が見られた。 2年半前に外転筋の筋トレと足部変形防止も兼ねて、左外側ウ ェッジ、両足ヒールアップした短下肢装具付靴型装具 (以下現装具)を作成。完成直後、歩行時股関節外転外旋と後方重心あり。精神的緊張で、バランスを崩す場面にて身体硬直あり。プログラムとして関節可動域練習、腹臥位姿勢保持練習を行い、歩行時前方ステップ促しとして、手すり把持での起立・立位練習と、手引き歩行練習を実施。 </p> <p>【結果】</p> <p> 介入後1年程でステップ改善と歩行介助量軽減が可能。足関節背屈可動域は介入開始時と比べ著変なし。現装具は足部前方荷重可能となり、ステップ円滑となった。元々恐怖心が強く、現装具への適応にも時間を要したが、2人介助で段差昇降練習も可能。徐々に使用頻度が増加した。しかし、身長・体重の増加とイベントや環境変化にて、歩行への恐怖心が出現。右母趾の深爪による傷も重なり、現装具着用困難な期間が1か月程あった。傷の治癒後、現装具で歩行練習を再開したが、後方重心が多く歩行困難となった。家族介助も困難となり、現装具の着用機会減少。現在、現装具はリハビリのみで使用。家族より日常生活で使用できる装具の希望あり、高校卒業後の生活でも着用できる新しい装具の選定をすることになった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 歩容改善と関節可動域維持目的の装具作成し、歩容改善と生活場面にて使用可能となったが、現在は装具の使用頻度が減少。背景として、前方荷重促進目的のヒールアップが、成長による足部前方への荷重増加にて恐怖心に繋がったと考える。また、精神的ストレスも身体状況に影響を与えていたと考えられる。今回の結果として、精神的安定のある装具と身体的改善を目的とした装具を比較し、本症例は前者の方が生活場面での使用が見込めると考えた。この結果をもとに、今後は精神面を考慮した装具を作成したいと考えている。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本報告は当院の規定に基づき、個人を特定できないよう配慮し、研究以外の目的で患者データを利用しないこと。また、症例の家族に対して本報告の主旨を伝え、書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 54-54, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817242112
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_54
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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