未独歩に対して、改良成人歩行器が有効であったプラダ―ウィリー症候群小学2年生の一例

DOI
  • 楠 拓也
    苫小牧市福祉部発達支援課 苫小牧市こども通園センターおおぞら園
  • 井上 あゆみ
    苫小牧市福祉部発達支援課 苫小牧市こども通園センターおおぞら園
  • 野村 穂乃香
    苫小牧市福祉部発達支援課 苫小牧市こども通園センターおおぞら園

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 15番染色体異常が原因とされるプラダ―ウィリー症候群 (以下、 PWS)の特徴は運動及び知的発達の遅れ、筋緊張低下、摂食障 害など多岐にわたる。運動発達の遅れは乳児期に顕著で、歩行開始後は目立たなくなることが一般的であるが、今回我々は歩行開始が遅く、改良成人歩行器を使用し、独歩を獲得したPWSの一例を経験したため報告する。 </p> <p>【方法および症例報告】</p> <p> 症例は当園に通園している7歳女児。出生後すぐに、PWSの診断を受け、現在は市内特別支援学級 (肢体不自由)に就学している。左股関節臼蓋形成不全を呈していたため、出生後リーメンビューゲル装具をしていた経過あり。また、左凸の側弯が顕著になってきており、Cobb角は38°と側弯症の診断を受けている。 小学校入学前の日常移動は、骨盤帯付ポスチャーコントロールウォーカー (以下、PCW)を3年間使用し、歩行していた。不安感を訴えるようになり、小学校入学を機に歩行器を変更することになり、成人歩行器松永製作所MV-100 (以下、MV-100)を改良し、日常において使用することとした。 </p> <p>【結果および経過】</p> <p> 小学校入学前の運動評価ではPCW使用で30mの歩行直線距離 で疲労感が増し、中断していた。10m歩行は、25秒を要した。入学後のMV-100を使用した10m歩行は、20秒を要し、歩行速度は増した。30mの直線距離においても疲労感はなく、中断せずに歩行は可能だった。 入学後は当園のリハビリを月2回実施し、学内においても積極的な歩行器使用及び全身の筋力増強トレーニングプログラムを作成し、自立活動時間及び体育の授業内に取り入れるよう依頼した。 小学2年生になり、独歩が可能になり、歩行器使用なしの10m歩行は、22秒を要した。 </p> <p>【考察】</p> <p> 小学校入学前におけるPCW使用時よりもMV-100での歩行速度が増す結果となった。PCW は、後方型歩行器に分類され、購入時の公的助成の対象であり、利点が多くあることから脳性麻痺児などには利用者が多い。児 にとっては後方重心になりやすく、前方に重心を偏位させることへの不安感が生じるため、歩行速度は低くなったと思われる。 PCWでは方向転換時は一度持ち上げる必要があるが、前方型歩行器として改良を加えたMV-100は、スムーズな方向転換を行 うことができ、学内における教室移動では利用しやすかったと思われる。また、荷物を同時に運ぶことができ、教具を持ちながら移動できる点としては、授業への参加意欲及び自立度が高くなったと思われる。主観的ではあるが、児自身もPCWよりも押して歩く歩行器の方が歩きやすいとのことだった。 今後、6分間歩行や歩数を計測し、経時的に検証を行う必要があると考えられる。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>保護者に症例報告の趣旨および倫理的配慮について説明し、書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 58-58, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817243776
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_58
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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