神奈川県立特別支援学校の自立活動医事相談事業における外部専門家の役割と課題 ~自立活動担当者との連携~

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 神奈川県立総合療育相談センターは、神奈川県教育委員会からの依頼で2003年より特別支援学校の自立活動医事相談事業(以下医事相談)に対して理学療法士等の外部専門家の派遣を行っている。神奈川県立特別支援学校では2008年より自立活動教諭(以下学校専門職)を採用している。学校専門職が常駐している中で外部専門家を活用する事業を行うのは、全国でも数少ない取り組みである。しかし医事相談の活用の有無や活用方法は各学校で違いがあり、学校現場レベルでの意見を抽出する機会がほとんどなかった。そこで本研究は医事相談の実態把握とともに外部専門家の役割や課題について明らかにすることを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p> 調査対象は神奈川県立特別支援学校28校に在籍する学校専門職 (理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士)、医事相談担当の教育相談コーディネーター(以下Co)、教員とした。方法は無記名のWebアンケート調査を実施した。質問内容は(1)基本属性、(2)医事相談の実施状況に関すること(活用状況、必要性、対象児童生徒の選び方、介入範囲)、(3)外部専門家に関すること(活用するにあたり重要点、効果、求めること、役立つ点、課題)であった。調査結果は全体集計及び医事相談の経験年数(5年未満と5年以上)と職種(学校専門職とCo、教員)のそれぞれで比較を行った。統計処理はカイ二乗検定またはフィッシャー正確確率検定を行い、有意水準5%未満とした。自由記載はカテゴリー別に整理・収束した。 </p> <p>【結果】</p> <p> 62名から回答が得られ、有効回答は60名であった。外部専門家の必要性や効果については、全体の6割以上が肯定的な回答だった。全体集計から外部専門家は、実態把握や指導方法など医療面からの専門的な助言・指導、外部からの客観的な意見、専門性の維持・向上に活用されている割合が高かった。経験年数による比較と職種による比較では、自立活動担当者 (学校専門職、Co、教員)の医事相談への介入範囲と連携に関する複数の項目で回答の割合に差を認めた。 </p> <p>【考察】</p> <p> 今回の結果から自立活動担当者はチームで学校内のコーディネ ートを行い、神奈川県の専門職活用システムの一つとして医事相談を活用していた。医事相談における外部専門家は、自立活動指導の充実や教員の専門性向上だけでなく、学校専門職にとっても専門性向上や多角的な意見交換の機会として有効であることが示唆された。連携に関する項目は、職種や経験による個人の考え方や学校としての活用方法の仕組みが回答の違いに影響したと考えられる。医事相談において自立活動担当者が実態把握、相談内容の抽出、相談後のフォローを担ってくれるため、外部専門家の助言・指導が十分に活かされていると考える。課題としては結果から学校の特徴や地域資源の違いにより、学校として医事相談を活用する仕組みが整っているか十分に確認できなかったことが挙げ られる。今後、医事相談の発展のためには(1)活用方法を共有し、コーディネートに活かす、(2)自立活 動担当者と外部専門家が連携・協働できる関係性を築く、(3)学校ごとに異なる医事相談の仕組みの整理、(4)医事相談の継続が必要であると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本調査は神奈川県立総合療育相談センター倫理委員会の承認を得た (承認番号23001)。本調査と学会発表に関して、神奈川県教育委員会には口頭と書面で説明し、承諾を得た。また神奈川県立特別支援学校28校の学校長と調査対象者には書面で説明し、アンケートの提出をもって同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 65-65, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817246848
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_65
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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