脊髄性筋萎縮症Ⅰ型(人工呼吸器使用)症例への姿勢保持アプローチの効果~実用的なリフター使用のために~

DOI
  • 鈴木 みほ
    東京小児療育病院 リハビリテーション部 理学療法科

Abstract

<p>【はじめに】</p> <p>脊髄性筋萎縮症 (以下SMA)I型では生後0~6ヶ月の間に発症し、人工呼吸器が必要となる症例が多い。フロッピーインファントを呈し、低下した骨間筋筋力に比して比較的保たれた横隔膜の働きにより奇異呼吸が認められ、ベル型胸郭や漏斗胸などの胸郭変形や未発達の原因となる1)。また、胸郭変形により呼吸循環機能や姿勢保持能力への影響がおこりやすい傾向がある。今回、人工呼吸器使用症例を担当し、在宅生活におけるリフターの導入に携わる機会を得た。スリングシート上での姿勢保持が困難であった症例に対し姿勢保持能力を促すアプローチとポジショニング、補装具の工夫により姿勢保持能力が向上し実用的なリフター使用が可能になった経過について報告する。 </p> <p>【症例報告】</p> <p>SMA I型 男児 生後3ヶ月時、筋緊張低下・舌線維束攣縮・腱反射低下・呼吸状態悪化、気管切開となり4ヶ月 ~人工呼吸器装着。2歳喉頭気管分離術、胃瘻造設。 手指の屈曲動作、足部内反を伴う足趾屈曲の随意運動可能 </p> <p>【経過】</p> <p>就学時リフター設置 フラットタイプのスリングシー ト背臥位が不安定になるため心拍数の上昇、酸素飽和度の低下が見られ、背シート内にアクリル板を挿入しての使用を開始。アクリル板の抜き差しが介助者の負担となっていた。 側臥位のポジショニングでは、短時間で心拍数が上昇するため日常的に背臥位でいることが多く、人工呼吸器の呼気時には前方の柔らかい胸郭が優位に膨らむことにより、肩甲骨が内転位となり、肩甲帯部分が接触支持面とならず、頭部が不安定となっていた。 週1回1時間の訪問PTにおいて①背臥位で肩甲胸郭関節の可動性を引き出し、②上部体幹の安定性に対して骨盤を安定させる、 ③肩甲骨を外転方向に引き出して側臥位姿勢を保持、④側臥位の角度にバリエーションをもたせ扁平胸郭の改善と側臥位姿勢における頭部と眼球コントロールを促した。 日常生活の中で心拍数の上昇なく、側臥位姿勢保持が可能となり、側臥位の機会が増えた。PT場面では随意運動が可能な手指の動作を目で確認出来る程に側臥位が可能となり、それを見るための頭部の保持、眼球運動も促すことができた。また、背臥位で足趾の屈曲の随意運動が可能で足底接地するとそれを股関節の内外転動作へと繋げることが可能であることから車いす乗車時にSHBの補高で足底接地し、オープンカイネティックの動きからクローズドカイネティックに変え、足趾の随意性を股関節、下部体幹の安定性へと繋げられる設定とした。 </p> <p>【結果】</p> <p>介入から2年後、背臥位姿勢が安定しアクリル板がなくてもスリングシート内で安定して頭部を保持することが可能となり、日常的なリフターの使用が可能となった。 </p> <p>【考察】</p> <p> SMAⅠ型では呼吸機能の維持のための呼吸理学療法、成長に伴うROM低下の予防やポジショニングアプローチが中心となるが、姿勢コントロールの潜在性を引き出し、それを日常に汎化することで、リフターの実用使用が可能になったと考える。姿勢の安定により頭部や眼球運動の向上を促すことができ、コミュニケーション能力や学習へ繋げられると期待できる。 引用文献:1)藪中良彦、木元稔、坂本仁:小児理学療法学 p363(2020) </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>当院の倫理委員会の承認を得ている (承認番号 :R05-02) 本人及び家族より写真等の使用については文書にて許可を得ている 対象者の顔写真はモザイク処理をし、個人の特定を防ぐ他、年齢や地域など個人を推測できるような情報の提示を避ける </p>

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