在宅における医療的ケア児の位置的頭蓋変形の発症状況と運動発達との関連

DOI
  • 内尾 優
    東京医療学院大学 保健医療学部リハビリテーション学科 ベビーのための訪問看護ステーションベビーノ
  • 木庭 小百合
    ベビーのための訪問看護ステーションベビーノ
  • 齊藤 ゆう
    ベビーのための訪問看護ステーションベビーノ
  • 石沢 由香
    ベビーのための訪問看護ステーションベビーノ
  • 平原 真紀
    ベビーのための訪問看護ステーションベビーノ

抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 乳幼児の頭蓋骨は成人とは異なり、骨と骨の固定性は低く位置的頭蓋変形の問題を生じやすい、これらは外見だけではなくその後の発達への影響が懸念されている。なかでも医療的ケア児は臥床する時間が長く位置的頭蓋変形の進行を助長しやすい。本研究の目的は、医療的ケア児の位置的頭蓋変形の発症状況と運動発達との関連について調査を行うことである。 </p> <p>【方法】</p> <p> 対象の選択基準は、乳幼児専門の訪問看護ステーションである 1施設において登録されている児、除外基準は、頭蓋骨癒合症、頭蓋骨手術、頭蓋内外傷、シャント術後の診断を受けた児とした。評価は、頭部変形評価、運動発達評価とした。頭部変形評価にはArgenta分類を用い、これは位置的頭蓋変形の重症度を 評価する観察的評価であり、1(軽症)~5(重症)に分類される。なお、本研究では分類1にも満たない場合0と定義した。運動発達評価にはアルバータ乳幼児運動発達検査法を用いた。また、母体、周産期の情報について診療録より調査した。解析は、対象を頭部変形の程度に基づき、頭部変形なし群、頭部変形あり 群に分け、アルバータ乳幼児運動発達検査法の腹臥位、背臥位、座位、立位の4項目の結果を2群間で比較した。検定にはSPSS Version 28を用い、有意水準は5%とした。 </p> <p>【結果】</p> <p> 解析対象となった児は51名 (平均年齢1.5±1.1歳)であり診断名は、脳原性疾患14名、染色体異常8名、遺伝子疾患6名、早産低出生体重児14名、その他9名であった。Argenta分類の結果は分類0:18名/1:15名/2:14名/3:4名/4:0名/5:0名であった。解析対象児は、Argenta分類に基づき分類0~1の変形がごく軽度な頭部変形なし群33名と分類2~5の頭部変形あり群18名に分類された。2群間における母体、周産期の情報、運動発達評価を比較した結果、母体、周産期の情報については差を認めなかった。運動発達評価において、頭部変形あり群は頭部変形なし群に比しアルバータ乳幼児運動発達検査法の腹臥位 (5.4±5.7 vs. 9.0±7.7)、座位 (2.9±3.2 vs. 5.3±5.1)、立位 (1.6±1.5 vs. 4.2±5.2)の項目の点数が有意に低かった。背臥位では差を認めなかった。 </p> <p>【考察】</p> <p> 結果より、医療的ケア児における位置的頭蓋変形は、Argenta分類1~3と軽症例が多かったが、発症頻度は高いことが明らかとなった。 頭部変形あり群と頭部変形なし群における運動発達の比較においては、腹臥位、座位、立位において有意差を認めた。頭部変形は頭蓋骨に対するいずれかの側の非対称な外力で生じることから、背臥位で過ごすことが多く腹臥位や抗重力姿勢の運動発達が遅い児に頭部変形は生じている可能性が考えられた。頭部変形を有するまたは予測される児には早期から腹臥位での抱っこや遊びを行うことを推奨することが報告されており、本研究結果による腹臥位の遅延はこれらの報告との関連があることが示唆された。今後、成長に伴う変化や発達にどのような影響があるのかについても検討していく必要があると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究は、東京医療学院大学研究倫理審査委員会 (承認番号21-9H)の承認を得たのちに実施した。研究を開始するうえで、同意しなくとも不利益を受けないこと、同意は撤回できること、研究の意義や目的等を記載した同意説明文書を対象児の代諾者である家族に渡し、文書および口頭による十分な説明を行い、代諾者の自由な意思による同意を文書で取得した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 87-87, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817260672
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_87
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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