居宅訪問型児童発達支援事業開始後4年間の経過と課題報告 難病や脳腫瘍の子どもの地域移行と理学療法実践

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 2018年に新設された医療的支援にとどまらず総合的な社会的支援への移行も視野に入れ、著しく外出困難な子どもに対して居宅を訪問し、児童発達を提供する居宅訪問型児童発達支援事業 (以下事業と略す)が5年目を迎える。京都府で初めて認可された当センターの個別支援計画にとり入れた理学療法実施例について述べこの制度の課題も提示する。 </p> <p>【方法】</p> <p> 当センターで支援介入したケースを後方視的に調査し特徴をまとめた。 </p> <p>【結果】</p> <p> 事業申込みから開始までの期間は平均16日で最長60日であった。4年間で15人が利用、診断名は、染色体異常、脳腫瘍 (ラブドイド腫瘍)、脊髄性筋萎縮症、ミトコンドリア心筋症と幅広い。 利用された子ども12人が障害認定等されていない1歳未満の低年齢児であり、開始時未定頸・寝返り困難でAlberta Infant Motor Scaleスコアから同年齢児に比較し粗大運動の遅れが示唆された。8人が低出生体重児で7人が経管栄養等の医療ケアが必要だった。また、全体で医療ケアが必要な子どもは10人、利用目的は感染リスクが高く外出困難なため自宅での子育て支援と児童発達支援 (本人支援)が主だった。 家族が困難を感じていた課題は、①注入後吐き戻す (7人)②泣く。緊張する。不機嫌でぐずる (5人)③夜眠れず生活リズムが整わない (7人)、他には遊び方がわからない、元気に育ってほしいという内容もあった。理学療法士は、家族との協業による目標設定を行い多職種で共有して介入した。 実際の症例を紹介する。 退院後、吐き戻しが続くAさん(10ヶ月)に対して、医師・看護師に治療状況の説明を依頼、吐き戻しの要因や呼吸状態等の確認後、呼吸理学療法と腹部の圧迫を防ぐ腹臥位姿勢での頭部挙上や回旋を促した。 腫瘍の治療と児童発達支援の両方が必要なBさん (5歳)には、学校・通所サービスへの保育所等訪問支援制度を併用して治療期に沿って支援を統一し、神経症状からくる不快の要因の整理と装具を使用した快適な環境設定を行い基本動作能力の向上を図った。 2例とも過ごしやすい姿勢環境での学習と感覚遊びを行い、苦痛を察知し解決する事で子育て上のコミュニケーションを築いた。体調に合わせ子どもの育ちと遊びの相談会に参加してもらい保育士と具体的な育児相談・保護者同士の情報交換の場を提供した。状態調整系 (栄養・呼吸)が安定し、子どもが楽しく小集団の活動に参加できたことが、保護者にとって大きな自信となり通所移行を助けた。 4年間で本事業を利用された子ども15人中9人が通所移行、うち 5人は本事業と保育所等訪問支援事業の両制度を併用して地域移行した。 </p> <p>【考察】</p> <p> 重度な疾病のため環境の変化に弱い子どもは状態調整系が不安定で、保育士でも不機嫌で遊びにくい状況であったが、理学療法士も共に関わることで希望する育児生活を送れる一助となった。 利用開始にあたり手続きが多く支給決定までの期間が長い。手続きの簡素化が望まれる。また、厚労省の調査では地域に事業のニーズがないという報告もあるが、居宅に訪問して遊びを主軸に行う本事業は医療だけでは解決できない包括的子育ての初期支援の一つとして有効であると考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>ヘルシンキ宣言に基づき、本報告の主旨や内容、個人情報保護について、対象者のご家族に十分に説明し口頭と 書面にて同意を得た。 尚、当法人倫理審査委員会の審査・承認を得ている。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 92-92, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817263872
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_92
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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