難治頻回部分発作重積型急性脳炎を発症した患者への理学療法介入とリスク管理

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抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 難治頻回部分発作重積型急性脳炎とは、極めて難治かつ頻回の焦点発作を特徴とする原因不明の疾患である。この度、回復過程における激しい体動やてんかん発作に対し、理学療法介入中のリスク管理に難渋した一例について報告する。 </p> <p>【症例】</p> <p> 症例は12歳女子。身長158cm、体重52kg、BMI20.8kg/m2であった。X日より発熱、X+5日目に間代性痙攣を認め救急要請された。前医へ入院後も痙攣発作が持続し、翌日、当院ICUに転院搬送、深鎮静、呼吸器管理となった。投薬加療継続され、 X +21日気管切開施行、X+22日より理学療法介入開始、X+ 23 日一般病棟へ転棟した。 </p> <p>【経過】</p> <p> 理学療法介入開始時、JCS10~20、随意運動はなかった。X+ 26日より手を動かす動きがあり、X+32日にはベッド柵に足をかけるなど危険な体動が増えた。安全確保のためベッド周囲の 環境調整を行い、離床はギャッジアップ座位に留めた。X+43 日、 呼吸器離脱。声かけに笑顔が見られるようになった反面、突如、起き上がり座ろうとするなど体動が激しさを増した。ベッド上での取り組みに限界があり、転落防止に体幹ベルトを追加したティルト・リクライニング式モジュール車椅子を用いて車椅子乗車を開始した。移乗には四肢を突っ張る、蹴る、大声を出すなど激し い抵抗があり、複数名の介助を要した。X+45日には訓練室にて、療法士複数名で座位やサドル付き歩行補助器を利用した歩行練習 を開始した。発語も増え言葉のやり取りが可能となったが、全般性注意障害、感覚性失語が認められた。 X+65日には独歩獲得、 ADLは改善したが、衝動的な行動が多く見守りは必須だった。またこの頃、理学療法介入終了後のてんかん発作が頻回となった。主治医と相談の上、介入時間を夕方から日中に、場所を訓練室から病室へ変更し経過観察とした。 X+84日より訓練室での介入 を再開した。周囲へ次々と声をかける、尿意切迫で突如走り出すなど、行動制御できず常に注意が必要だった。移動時は腕組み、運動は床上でのストレッチや筋力トレーニング、逃走予防に吊り下げ式の免荷装置を使用した歩行とした。X+101日、訓練室内でてんかん発作あり、意 識消失、息止めありチアノーゼが認められた。痙攣発作時の対 応を主治医、病棟と再確認し、紙面にまとめ周知した。また、予め対応に必要な物品を揃え、運動は発作発生時の転倒転落に備えた内容に変更、発作の兆候を見落とさないよう、より一層の注意を払った。その後も介入中の発作は続いたが、発作出現に伴う怪我はなかった。身体機能は回復したが、てんかん発作、高次脳機能障害は残存した。X+115日に地域、学校含めた多 職種カンファレンスを行い、X+131日自宅退院、X+155日より復学した。 </p> <p>【考察】</p> <p> 主治医、病棟、他療法士と緊密な連携をとることで、様々なリスクに対応しながら、回復に合わせた運動量を確保し続けた。その結果、薬剤調整終了時には通学に十分な身体機能を獲得しており、早期復学が叶った。学校へ通うことは思春期の患者にとって、学習面だけでなく社会性を学ぶ点においても非常に重要と考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本学会で発表するにあたり、症例の保護者に対し、これまでの診療記録を振り返り報告をまとめること、個人が特定されるような情報は公開しないこと、発表にあたり新たに行う治療や介入、評価などはないこと、個人の不利益になることはないこと、発表当日まではいつでも撤回可能であり同意撤回により、今後当院での加療を受ける上でいかなる不利益も被らないことを書面を用いて十分に説明した。検討期間を設けた後、同意書への署名、捺印をもって同意を得た。なお、演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業などはない。 </p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 96-96, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817266048
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_96
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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