寛骨臼形成不全に伴う変形性股関節症における骨盤側方傾斜の方向の検討

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抄録

<p>目的:骨盤側方傾斜(以下骨盤傾斜)とは冠状面での骨盤の側方への傾きを示す。寛骨臼形成不全による変形性股関節症では患側が下方に傾斜する骨盤傾斜が一般的であるが,時として患側が上方となる骨盤傾斜が存在する。本研究の目的は骨盤傾斜の向きと股関節の形態学的特徴の関係,脊椎アライメント,股関節機能の関係を明らかにすることである。</p><p>対象および方法:単一施設後ろ向きコホート研究にて,2018年6月から2021年8月までに片側人工股関節全置換術を行った100人(100股)を対象とした。骨盤傾斜が2°未満のFlat群(F群),患側下方に2°以上傾くAffected side群(A群),患側上方に2°以上傾くHealthy side群(H群)の3群に分けて患者背景,臨床成績,下肢単純X線学的評価,脊椎アライメントを比較検討した。</p><p>結果:F群は39例,A群は42例,H群は19例であった。患者背景は有意差を認めなかった。術前日本整形外科学会股関節機能判定基準はH群で有意差はないものの不良な傾向にあった。Crowe indexはF群9.0±12.7,A群20.5±19.5,H群34.8±17.7と有意にH群でF群より大きかった。骨頭外方化距離はF群14.8±5.3mm,A群で16.7±6.7mm,H群で22.6±6.1mmで有意にH群は他の群と比較し外方化していた。股関節内転角F群6.1±4.0°,A型1.4±4.2°,F群9.3±6.0°とA群で有意に外転していた。機能的脚長差はF群−2.1±7.2mm,A群4.9±8.3mm,H群−6.3±12.9mmと有意に他群と比較しA群で患側が短く,大腿骨長差もF群0.6±5.9mm,A群5.0±9.0,H群−1.8±10.1と有意にA群で患側が短かった。Lumbar scoliosis angleはA群が3.0±9.8°,F群が−2.0±4.5°,H群が−2.3±5.4°とA群が他の群より有意に健側凸となっていた。</p><p>結論:骨盤傾斜が患側下方向に傾く変化は脚短縮,股関節外転位と関連があり,骨盤傾斜が患側上方向に傾く変化はCrowe indexと,股関節内転位と関連していた。患側が上方に傾く患者ではわずかに股関節機能が劣る可能性が示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673817408512
  • DOI
    10.11551/jsjd.43.8
  • ISSN
    18849067
    18832873
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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