psoas volume index(PVI)は消化器癌における栄養病態を反映しうるか.

DOI
  • 志田 隆史
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 筑波大学 医学医療系
  • 青木 海
    東京医科大学茨城医療センター 消化器外科
  • 竹越 一博
    筑波大学 医学医療系
  • 鈴木 修司
    東京医科大学茨城医療センター 消化器外科
  • 下田 貢
    東京医科大学茨城医療センター 消化器外科

抄録

<p>【背景・目的】</p><p> 消化器外科領域においては,加齢による一次性サルコペニアと低栄養や担癌状態などによる二次性サルコペニアが増加し,その生命予後に影響を与えている.サルコペニア診断には筋量の他,握力や歩行速度などの測定が必要であり,実臨床においては実施困難なことが多い.一方,筋量の測定法は,DXA法や BIA法が診断基準としてコンセンサスが得られている.CT法は,他検査に比して被曝や費用の問題があるが,診断・経過観察に必要である.近年,CT画像より大腰筋体積を解析し,身長で補正したpsoas volume index(PVI)を用いた報告もありその有用性が報告されている.今回はPVIが消化器癌における栄養病態を 反映し,患者病態把握に有用であるかについて検討することを目的とした. </p><p>【方法】</p><p> 対象は2021年10月から2022年12月に外科手術を施行した消化器癌患者190名を対象とした.解析項目は,年齢,BMI,術後在院日数,栄養指標であるAlb,transthyretin(TTR), CRP-albumin ratio(CAR),Prognostic Nutritional Index(PNI)を測定した.骨格筋量はCT画像より大腰筋体積を解析し身長で補正したpsoas volume index(PVI)を用いた.PVIと体組成および栄養指標との関連について相関分析を行った.さらに,PVIを3分位(Q1~Q3)に分類し,Q1(低値群)とQ3(高値群)を比較検討 した.先行研究で報告されているPVIのカットオフ値を用いてサルコペニアを判定した(日本静脈経腸栄養学会雑誌2017).解析項目に欠損がある症例は除外した. </p><p>【結果】</p><p> 疾患の内訳は,肝胆膵50例(M/F:33/17),上部消化管39例 (M/F:29/10),下部消化管90例(M/F:56/34)の計179例,年齢の中央値は73歳(37-91歳)であった.癌全体におけるサルコペニアの有病率は29.1%であった.PVIとの相関分析の結果,年齢(r = -0.295,P < 0.001),BMI(r = 0.286,P < 0.001)は有意 な相関を示した.また,Alb(r = 0.262,P < 0.001),TTR(r = 0.335,P < 0.001),CAR(r = -0.068,P = 0.365),PNI(r = 0.258,P < 0.001)であり,Alb,TTR,PNIと有意な相関を示した.PVIの3分位解析では,術後在院日数は15.9 ± 12.5 vs. 13.2 ± 7.5(P = 0.069),Albは3.5 ± 0.7 vs. 3.9 ± 0.5(P = 0.003),TTRは17.7 ± 6.6 vs. 22.7 ± 5.8(P < 0.001),CARは 0.5 ± 1.5 vs. 0.3 ± 1.2(P = 0.446),PNIは42.7 ± 8.2 vs. 47.1 ± 6.9(P = 0.005)であり,PVI低値群は栄養指標の増悪を認めた. </p><p>【結語】</p><p> PVIは消化器癌における栄養病態を反映しており,PVI評価は患者病態把握に重要である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>東京医科大学茨城医療センター医学倫理審査委員会の承認を得た. 承認番号;IB1761</p>

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