治療と仕事の両立支援の基本的流れおよびPTとの連携経験の紹介

DOI
  • 本田 優子
    大阪公立大学 現代システム科学研究科 博士後期課程
  • 坂本 和歌子
    大阪労災病院治療就労両立支援センター 両立支援部
  • 井谷 美幸
    大阪労災病院治療就労両立支援センター 両立支援部
  • 髙矢 央子
    大阪労災病院治療就労両立支援センター 両立支援部
  • 浅田 史成
    神戸労災病院 中央リハビリテーション部
  • 久保田 昌詞
    大阪労災病院治療就労両立支援センター 両立支援部

抄録

<p>近年,治療と仕事の両立支援(以下,両立支援)が推進されている. 2003年以降の複数調査により疾病罹患直後の離職率の高さが課題とされてきた(2003,2013山口;2017高橋).これに対し,働き方改革実行計画(2017内閣府)では,患者・病院・企業の3者が適切な情報を共有した上で復職・就労継続を目指すことが示された.その情報共有方法は,2016年に厚生労働省が作成した両立支援ガイドライン (以下,ガイドライン)に掲載されている.一方支援現場では,理学療法のなかで就労情報に触れる機会があると想像するが,この政策推進されている両立支援とのリンクに戸惑う場合もあろうかと愚考する.そこで本発表では,両立支援の基本的な流れを示し,その調整役であるMSWが心頼りにしていた PTの意見について紹介し,両立支援における連携促進に資することを目的とする. </p><p>ガイドラインによる両立支援の流れは,まず病院は,患者・企業から勤務情報の提供を受け,次にその情報をもとに就労に関する医学的な意見を返答するというものである.そのツールとして勤務情報提供書(患者・企業作成)と主治医意見書がある.ここに多職種連携の必要性が生じる.主治医意見書は就労上の配慮の詳細な記載欄があり,ガイドライン記載例からもわかるように就労動作上の注意点や通勤の工夫についての記載を要する.質高い主治医意見書作成に向けて調整するMSWとしては,日常生活レベルではなく就労現場を意識した体力づくりや安全な就労作業の工夫についてのPTの意見は,患者にとって意欲に繋がりやすく参考になると感じている.なお,2018年以降,この文書連携については療養・就労両立支援指導料の算定が可能である.PTは算定可能な職種ではないが,病院全体の取組みを要する指導料のため,主治医意見書に対する積極的な意見発信が期待される .</p><p>ところで両立支援は,この【文書連携】のほか,患者・病院・企業が直接協議する【直接連携】,そして患者が企業と自己調整することに対する【側面的支援】という3つの連携方法があり,なかでも【側面的支援】が圧倒的に多い(2019 本田ら).PT同行による【直接連携】(企業訪問)では,動作環境評価と改善案を提示してもらった.【側面的支援】では,訓練のなかで患者本人が企業に適切に情報を伝えることを意識した動作提案などを実施してもらった.いずれの連携場面においても,患者の安全な就労にあたってPTの存在は心強く,今後もぜひ連携を深めていきたいと考える.</p>

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